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被爆外壁は残す方向 建て替え検討の広島アンデルセン旧館 社内チーム

 広島市中区の本通り商店街に残る被爆建物、広島アンデルセン旧館の建て替え検討で、アンデルセングループ(中区)の内部チームが、被爆部分の外壁を保存する方針を固めたことが2日、分かった。建物全体は建て替えを軸に検討。新築する建物に、被爆した外壁を活用する方向などを検討している。

 保存する外壁はいずれも2階部分で、本通り商店街に面する北側と、東側の2面。それぞれ長さ約22メートル、高さ約7メートル。建物は被爆後に改築を重ねたため被爆当時の外壁はこの2面だけとなっており、部分的に保存する方針を打ち出した。

 持ち株会社アンデルセン・パン生活文化研究所(同)内にプロジェクトチームを設け、1年かけて議論してきた。今後、工法や事業費などを精査し、会社として正式決定を目指す。新たな建物は、創業70周年となる2018年の完成を予定している。

 同社は、被爆建物への助成制度がある広島市とも協議している。広島市平和推進課は「爆心地に近い建物であり、被爆の実相を伝えるために一部だけでも残してほしい」としている。

 旧館は、本通り商店街に残る唯一の被爆建物。レストラン併設のパン販売店として使っている。(堀晋也)

【解説】高額な耐震補強 現状保存困難に

 広島アンデルセン旧館を今の姿で残すには、耐震性を高める工事のために多額の費用がかかる。このため、現状のままの保存は困難な状況となった。

 建て替えの検討方針が2013年に明らかになって以降、被爆建物としての歴史を考慮してアンデルセングループには存続を求める声が寄せられた。同社も「社内外にとって価値や思い出がある」として、現状に近い存続策を探った。

 一方でコストを検証したところ、今の建物での耐震補強は、建て替えを上回る費用を要することが判明。この結果、建て替えを軸に、被爆部分の外壁を全て残す方向となった。

 被爆70年。広島市で被爆建物の解体が進んでいる。市は1993年から、保存工事の費用を補助する制度を設けたが、現在台帳に登録される施設は86と、96年から14減った。本通り商店街で親しまれた旧山口銀行本通支店も、2002年に解体されている。

 アンデルセンの内部チームの方針は最終決定ではない。部分保存も特殊な工法が必要で、建設業界の人手不足もあり事業費が膨らむ可能性もある。民間による被爆建物の維持の難しさを浮き彫りにしている。(堀晋也)

広島アンデルセン旧館
 1925年に三井銀行広島支店としてできた2階建てルネサンス様式の建物。旧帝国銀行広島支店だった45年に被爆した。爆心地から360メートル。67年にアンデルセングループが購入し、店を開いた。78年に隣接地に8階建ての新館を建て、建物を一体化させた。

(2015年2月3日朝刊掲載)

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