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福島原発 レベル7 保安院引き上げ 放射性物質 基準超す

 経済産業省原子力安全・保安院は12日、東京電力福島第1原発事故の深刻度を国際評価尺度(INES)の暫定評価で、最悪の「レベル7」に引き上げたと発表した。史上最悪の原子力事故とされる旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同レベルとなる。

 これまで放出された放射性物質の量について保安院は37万テラベクレル(テラは1兆)、原子力安全委員会は63万テラベクレルと推定。1~3号機の評価としてレベル7の基準である数万テラベクレルを大きく上回ったと判断した。これまでの暫定評価はレベル5。

 保安院は、これまでの放出量はチェルノブイリ事故の放出量(推定520万テラベクレル)の1割程度だと説明した。だが東電の松本純一原子力・立地本部長代理は放出が止まっていないことから「放出量がチェルノブイリに匹敵する、もしくは超えるかもしれない懸念を持っている」とした。

 原子力安全委員会の代谷誠治委員は12日、3月23日の時点でレベル7に相当する危険性があると認識していたが、暫定評価の見直しを保安院に求めなかったと明らかにした。同委員は事故から1カ月経過してレベル7としたことも「遅くなったとは思わない」とした。

 菅直人首相も記者会見で、レベル7への引き上げは「専門的な調査の結果だ」と強調。「(発表が)遅れたとか、(事故を)軽く見たことはない」と訴えた。

 福島第1原発では原子炉や使用済み燃料プールの冷却機能が失われて燃料が一部損傷したと考えられ、水素爆発も起き、国内で前例のない大量の放射性物質を放出。安全委は、相当部分は2号機の圧力抑制プール付近で起きた爆発に伴い放出されたとみている。

 東電の清水正孝社長は「大変な心配と迷惑をおかけし、心よりおわび申し上げる」とのコメントを発表。保安院は現在の避難指示区域などを見直す必要はないとした。

 保安院を担当する西山英彦官房審議官は、チェルノブイリのように死者は出ていないとし「原子炉圧力容器や格納容器は多少の漏れがあるが、原形をとどめて働いている。チェルノブイリのように原子炉で大規模、継続的な火災が発生しているわけではない」とした。

 安全委は、福島第1原発から最大で毎時1万テラベクレルの放射性物質が放出され、数時間続いたと試算。放出量はすでに毎時1テラベクレル以下とみているが、原発の北西約60キロ、南南西約40キロで、3月12日~4月5日の積算外部被曝(ひばく)放射線量が年間限度の1ミリシーベルトを超えるとも見積もっている。

(共同通信配信、2011年4月13日朝刊掲載)

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