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連載・特集

廃炉の世紀 第3部 課題を聞く <5> 仏アレバ社 アルノー・ゲイ執行副社長

解体事業の成長期待 ノウハウ持つ人材必要

 原子力発電所の解体などを担う「廃炉ビジネス」が、世界で広がり始めている。世界最大手の原子力複合企業であるフランスのアレバ社で、廃炉部門のトップを務めるアルノー・ゲイ執行副社長は「廃炉は今後、建設や燃料製造を含めた世界の原子力市場の1割以上を占めるビジネスになる」と見通す。

 ―廃炉事業をなぜ強化するのですか。
 世界初の原発稼働から60年が過ぎた。「寿命」を考えれば、廃炉はこれから自然と伸びる市場だ。アレバは2008年、グループの解体事業を統合し、私がトップに就いた。私たちは自らが所有する核施設の解体の経験を蓄積しており、世界でビジネスを広げようとしている。

 フランス以外でも、米国ではハンフォードなどの核施設で活動しているし、ドイツでも原子炉解体の専門技術を開発している。11年までは核燃料サイクル施設の解体が中心だったが、福島第1原発の事故で状況は変わった。特に、脱原発を決めたドイツは原発の大量廃炉が段階的に進むことになる。知識を最大限生かして国際的に事業を広げる。

 ―廃炉の課題は。
 経験上、廃炉自体には大きな技術上の困難はないと考える。難しい点を挙げるとすれば、廃炉を取り巻く環境だ。例えば、廃炉の最初に取り出す使用済み燃料を最終的に処分する場所があるかどうかは重要になる。運転と廃炉は全く違う考えに基づくので、作業員も解体のノウハウを持つ人材が必要になる。廃炉は巨額の費用が必要で、電力会社の経営にインパクトが大きい。つまり作業の効率化が重視される。

 ―世界の廃炉市場の今後をどう見ますか。
 大きく市場を分けると、一つが再処理工場など核燃料サイクル施設の解体。二つ目が原発の解体。初期の第1世代原子炉の廃炉がこれからドイツ、米国、日本を中心に世界中で進むことになる。建設や燃料製造などを含めた世界の原子力市場で、廃炉ビジネスは近いうちに10~15%を占めるとみている。

 ―日本の市場の今後は。
 福島第1原発の廃炉に集中していることもあり、まだ全体の先行きが見えない。市場が形成される準備段階と言っていい。日本の大手原発プラントメーカーがどう動くかも見えていない。

 私たちは昨年、日本企業と廃炉事業を専門とする合弁会社を設立し、備えている。大手メーカーと最初の接触をしている段階。おそらく大手のどこかと組む形で、日本の廃炉ビジネスの市場に参入することになるだろう。

 1963年フランス生まれ。フランスのナンシー・化学工業高等師範学校(ENSIC)卒。フランス国営石油研究所(IFP)でエネルギー経済学修士号を取得。2008年から現職。

(2015年2月4日朝刊掲載)

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