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英語で被爆証言 平井昭三さん 4年目の夏

■記者 石川昌義

 70歳を過ぎて英会話を学び始めた府中町の平井昭三さん(78)が、被爆体験を英語で伝えるボランティアを始めて4年目の夏を迎える。原爆や平和をテーマにした通訳に取り組む市民団体の仲間に支えられ、国境を超えた「継承」に打ち込んでいる。

 県立広島商業学校(現在の広島商業高)の4年生のとき、祇園町長束(広島市安佐南区)の級友宅で被爆。市中心部の会社に出勤していた父と、建物疎開に動員されていた弟を失った。

 戦後は市内の百貨店に勤めた。定年退職からしばらくたった2002年ごろ、「退屈しのぎに」で通い始めた近所の英会話教室のカナダ人講師に、英語を使った被爆体験の証言を勧められた。

 初の証言は05年8月6日。平和記念公園(中区)で外国人に声を掛けた。「下手な英語だったが、話すうちに人の輪が膨らんだ」と思い起こす。

 06年、米国サウスカロライナ州の語学学校に短期留学。帰国後、平和のためのヒロシマ通訳者グループ(HIP)に入り、平和記念公園や原爆資料館を訪れた外国人に体験を語っている。

 被爆直後、母と焦土を歩き、父の遺骨を拾った記憶を身ぶりを交えて話す。HIPの小倉桂子代表(70)=中区=は「体験を若い世代に伝えようとする熱意がすごい」と評する。

 平井さんの証言は、HIPの会員が通訳技術を学ぶための教本にも活用された。HIPの勉強会に毎回出席する平井さんは「残された人生、記憶を語り継ぐお手伝いを力の限り務めたい」。今夏も忙しくなりそう。8月6日には、原爆資料館でも証言する。

(2008年7月10日朝刊掲載)

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