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廃炉の世紀 第3部 課題を聞く <7> 負担押し付け 転換を 京都大原子炉実験所・小出裕章助教

恩恵と責任 直視すべき

 原子力発電所が運転を停止した後、立地地域はどれだけの期間の共存を求められるのか。科学者の立場で反原発を訴えてきた京都大原子炉実験所(大阪府熊取町)の小出裕章助教は「原子力の負担を一部の地域に押し付ける犠牲のシステムを止めなければならない」と主張する。

 ―廃炉の課題は。
 原子力発電所をいかに始末するか。例えば圧力容器や炉心構造物などは既に、中性子を浴び続けてそれ自体が強い「放射能」になってしまっている。解体しようとすれば作業員は被曝(ひばく)する。解体しても、残る放射性廃棄物の処分地は日本にない。

 解体を終えるのにどれくらいの時間がかかるかも不透明だ。廃炉中の東海発電所(茨城県東海村)は運転停止から20年近くたつが、いまだに原子炉の解体に手を付けられない。原子力推進の人たちは簡単に廃炉できるように説明しているが、それは問題だと思う。

 ―では運転を終えた原発はどうすべきでしょうか。
 解体そのものを止めてしまう選択肢もある。原発を解体せずに適切に保管して50~100年隔離するやり方だ。本当なら私たちが処分に責任を負わねばならないが、お守りしかできることはない。放射性物質は人の手で消せない。解体廃棄物で中心となるコバルト60は半減期が5年。100年先はずいぶん扱いやすい。新たな方策が見つかるかもしれない。

 ―そうなると、廃炉後も立地地域は長期間、原発と共存を求められます。
 それでいいのか、と私はあえて消費地の人々に問いたい。賛否で地域が分断しても、苦渋の選択で原発を受け入れた地域が最終的にごみまで押し付けられてしまっていいのか。私は電力の利益を得た人たちが引き受けるのが正しいと思う。解体時に生じるごみも、高レベルのごみも、電力会社の本社がある都市が受け入れるべきだと主張したい。

 自分に火の粉が及ばなければ無関心を決め込む人々の姿勢が原子力を支えてきた。また、ごみはいつか必ずどこかへ搬出されると信じていた立地地域も、間違いに気付かねばならない。

 ―解決策はありますか。
 放射性物質は人の力で消せない。捨てられない、という意味で私は廃棄物でなく「廃物」と呼ぶ。少なくとも地下に埋め捨てるのには反対だ。例えば原発の運転中に出る低レベルの廃物は既に青森県六ケ所村に送られ、埋められている。管理期間は約300年とされているが、科学は安全を保証できないと私は思う。

 根本的な間違いは、自分で始末できないごみを生み出したこと。電気の恩恵を受けた人たちは責任を受け止め、答えの見えない難題に向き合ってほしい。

こいで・ひろあき
 東北大大学院工学研究科修了。1974年京都大原子炉実験所に入所し、同年から現職。専門は原子力工学。東京都出身。

(2015年2月6日朝刊掲載)

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