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松井・広島市長 初の記者会見 五輪 一部開催も否定 

■記者 藤村潤平

 広島市の松井一実市長は14日、就任後初の記者会見に臨み、市政の懸案に対する見解を示した。2020年夏季五輪招致について検討を中止することを正式表明し、マラソンなど一部競技の開催の可能性も否定した。6月をめどに賛同自治体でつくる招致検討委員会を開き、説明する意向だ。

 松井市長は「経済対策が市の重要課題。お金の使い方を考えると不可能との結論を下したい」と述べた。東京都の石原慎太郎知事が以前に披露した東京をメーン会場に、マラソンなど一部競技を広島で開く構想にも「五輪は1都市開催が原則。例外をつくる権限が都知事にあると思わない」と語った。

 また、秋葉忠利前市長が主導してきた国内外から寄せられる折り鶴の長期保存・展示施設の整備構想に言及。「保存ではなく(平和への)思いを昇華させる」と強調し、ボールペンの胴体などに再生したり、平和を祈る際に燃やしたりするアイデアを披露した。

 旧市民球場(中区)の跡地利用については「若者中心のにぎわいの場にする」と方針変更を明言した。市議会で予算化されたライトスタンドの一部を除く球場の解体は進める。

 平和行政に関しては「出かける平和から迎える平和」との基本方針を掲げた。高齢化が進む被爆者の体験継承を重視する。平和記念式典で読む平和宣言は、起草委員会の設置も視野に入れる。

 この日の記者会見場には、秋葉前市長が使っていた核兵器廃絶の国際世論づくりを目指す「オバマジョリティー」キャンペーンの背景パネルがなかった。松井市長は新しいものを考え中とした。

広島市の折り鶴保存構想
 市は2002年度から「原爆の子の像」に寄せられた折り鶴を焼却せず保存。旧日本銀行広島支店(中区)など3カ所に1億1020万羽(93.6トン)が保管されている。市は10年度に長期保存・展示するための「折り鶴ミュージアム(仮称)」の検討委員会を設置。検討委は4月5日、広島大旧理学部1号館と旧広島陸軍被服支廠(ししょう)の二つの被爆建物を候補地とする報告書を秋葉忠利市長(当時)に提出した。

広島市の旧市民球場跡地利用計画
 5.5ヘクタールのうち8割を緑地広場に整備。広場は2013年春までに完成させ、こけら落としの行事として全国菓子大博覧会を予定する。イベント施設「折り鶴ホール」や飲食物販施設を設け、外野スタンドの一部は残す。広島商工会議所ビルが東側に移転・新築される。将来は劇場の建設も想定。


松井市長の懸案への考え方(14日の記者会見での発言要旨)

○2020年夏季五輪招致
経済活性化が重要課題。さらに東日本大震災の復興が大変な日本。不可能という結論を下したい。(招致検討委員会の会合を開き)こう考えて不可能にしたと、ご苦労さまと(伝える)

○折り鶴の長期保存
保存コストやもともとの折り鶴の使命を考えると正しいやり方でない。ボールペンの外(胴体)を作る紙などに再生、思いを昇華させる。お祈りをする時にファイヤーじゃないけど焼く方法もある

○旧市民球場跡地活用
2013年春に全国菓子大博覧会を開催する仕事が進行しているから、これはいただき、やりましょうと。(それまでに今後設置する検討委員会で)十分に議論してもらったら納得いただける活用法が出てくるんじゃないか

○広島西飛行場の市営化検討
(湯崎知事には)政治家としてもう少し話をさせてもらえないかと言ったつもり。市営飛行場がほしいと言う人に対し納得がいく状況なのか検証させてほしい。それで全然ね、箸にも棒にもかからないようなことをやるなら、政治家としておかしいじゃないか。そういう覚悟で議論する

○平和行政
広島は原爆が落とされた都市。核兵器廃絶、しっかり訴えなきゃいかん。出かけていって同志を募るというやり方である程度同志ができた。出かける平和から迎える(平和へ)。来てもろうて中身が空だったら全然意味ないんで、いよいよ内政的な平和施策になる。(平和宣言は)起草委員会みたいなものをつくった方がいいかもしれない

○議会との関係
(これまで)職員と議員の先生との話の場をやらんようにしていたのではないか。そこをよう考え、あらためたい

(2011年4月15日朝刊掲載)

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