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連載・特集

廃炉の世紀 第3部 課題を聞く <8> 慶応大・片山善博教授

核ごみ問題 放置懸念 立地地域の自立不可欠

 鳥取、岡山県境にある人形峠周辺で、ウラン採掘で出た残土が放置されていたウラン残土問題。国内の核のごみ問題の原点ともされる。鳥取県知事時代、搬出を求める住民を支援した慶応大の片山善博教授は「廃炉で生じる放射性廃棄物も、行き場がないまま問題が放置される可能性がある」と警告する。

  ―廃炉で出る放射性廃棄物や使用済み燃料の行き先は今も決まっていません。
 原子力発電所を廃炉にしても残る放射性廃棄物、核のごみをどうするか。廃炉の最大の課題だろう。おそらく国内のどこにも引き取り手はなく、行き場がない状況に陥る可能性が高い。ウラン残土問題で、私は既にそれを経験している。

 1988年に問題が発覚し、鳥取県の住民が当時の動力炉・核燃料開発事業団に搬出を求めたが、動燃の事業所がある岡山県は受け入れを拒否した。「現状保管しかないでしょう」。当時の動燃の担当者は私に面と向かって言った。行き場がないからその場にとどめ置くのは道理が通らない。

  ―「鳥取対岡山」の対立の側面も当時、クローズアップされました。
 動燃の事業所がある岡山県は搬入拒否を貫き、政治家も官僚も動かなかった。結局、放射線量が高い一部の残土について、それまでウラン採掘の「捨て石」と言っていたにもかかわらず一転、「資源」の名の下に巨額の資金を費やして米国に送った。あの程度の汚染度のものを、処理能力があるのに国内で処分できないのはおかしい。

  ―廃棄物をめぐる原子力行政の課題は何ですか。
 スピード感、オープンな対話、公正さ、透明性だ。国や電力会社などの関係機関が、最初から最後までオープンな姿勢で住民と対話する必要がある。地域に不信感が高まれば、住民に混乱と分断を生むからだ。

 福島第1原発の事故を経験して、放射性廃棄物の処分問題は難しさを増している。だがこれから廃炉が加速すれば、使用済み燃料をどうするかも含めて、核のごみ問題と向き合わざるを得ない。立地地域であれ消費地であれ、次世代に対して責任を取れるのか、常に判断や行動を自問しなければならない。再稼働問題も、将来の核のごみ問題に覚悟はあるのか、と電力会社や自治体には問いたい。

  ―地域はいかに廃炉と向き合えばいいでしょうか。
 経済産業省では、廃炉後も原発の稼働時のような交付金を設ける方向で議論が進んでいるようだが、立地地域には自立を目指す姿勢が欠かせない。再生可能エネルギーなど新たな産業集積を通じて経済を自立させ、原発依存を抜け出す転換点にしてほしい。(山本洋子)=第3部おわり

かたやま・よしひろ
 東京大法学部卒。自治省府県税課長などを経て1999年鳥取県知事に当選。2期で退任し2007年から現職。11年の東日本大震災時、当時の菅内閣の総務相だった。岡山県瀬戸町(現岡山市)出身。

(2015年2月8日朝刊掲載)

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