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社説・コラム

社説 辺野古埋め立て検証 工事止め 結論待つべき

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沖の埋め立てを承認した仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事の手続きに法的瑕疵(かし)(欠陥)がなかったかどうか、検証が始まった。翁長雄志知事の私的諮問機関である有識者委員会が審査に当たり、7月初旬をめどに県へ報告する流れである。

 昨年11月の知事選で最大の争点となった辺野古問題が重大な局面を迎えた。公正中立で入念な検証作業を求めたい。

 有識者委員会の論点の一つは、埋め立ての必要性である。政府は市街地にある普天間飛行場の危険性除去は緊急の課題で、辺野古沖移設が唯一の解決策だとしてきた。仲井真氏もそれに合理性があるとしたが、その判断基準や経緯が検証されよう。

 もう一つの論点が環境保全である。仲井真氏は公有水面埋立法の基準からして承認という答えしかない、とした。それに対し、承認、不承認には知事の裁量が働くとする見方もある。

 絶滅危惧種ジュゴンへの影響や県外からの埋め立て土砂の懸念は残ったままだ。瀬戸内海の島で採取した土砂の辺野古への搬出については、おととい市民団体が環境、防衛両省に申し入れ、瀬戸内海の環境破壊と沖縄の生態系破壊を指摘した。

 しかし、手続きや判断の検証が始まり、県が中止を要請しているにもかかわらず、沖縄防衛局は現場での海上作業を続行している。昨年9月から中断している海底ボーリングの再開に向け、クレーン付き大型船を含む作業船5隻を投入した。

 防衛省は「法的に瑕疵はない」としているが、法的瑕疵の有無が検証の対象なのだ。

 さらに、このところ反対派に対する県警や海上保安庁の警備が過剰だとする批判もある。地元の名護市議会は先月下旬、抗議の意見書を可決した。

 辺野古移設については自民支持層の間でも分岐が生じ、「オール沖縄」の新知事誕生につながった。私たちも「最低限でも知事選での論戦を見守るべきではないか」と提言してきた。

 無用なトラブルを避けるためにも、海上作業は一時的に控え、有識者委員会の結論を待つべきではないだろうか。翁長氏も直ちに埋め立て承認を取り消す決断はしていない。

 一方、翁長氏は昨年12月の就任以来、安倍晋三首相や菅義偉官房長官との会談は一度も実現していない。先日は杉田和博官房副長官と会談し、辺野古移設反対を掲げて当選した立場をあらためて示した。

 そもそも安倍政権には、辺野古移設を立ち止まって考えようとした形跡が見られない。普天間撤去と「県外移設」を同時に進めることは難題だが、それは歴代政権の責任であって沖縄の責任に帰することはできまい。

 安倍首相は翁長氏との会談について「取り組みの連携を深める中で対話の機会が設けられていく。今後ともさまざまなレベルで対話し、理解を求める努力をしたい」と国会答弁するにとどめている。だが新知事の就任から2カ月以上たち、沖縄の基地負担軽減が国政上の重要課題であることを考えると、異常事態に見えても仕方あるまい。

 辺野古をめぐる現実が、知事選の民意を踏まえたものとはおよそ言い難い。辺野古問題は何一つ解決していない。

(2015年2月8日朝刊掲載)

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