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被爆「伝承者」今春デビュー 広島市15年度予算案に経費盛る 資料館で毎日講話

 被爆者の証言を語り継ぐ人材として、広島市が独自に養成してきた「被爆体験伝承者」が今春、デビューする。2012年度に研修を始めた1期生のうち全課程を終える約50人。市は学校などに派遣するのに加え、4月から毎日、原爆資料館(中区)で伝承者による講話会を開くため、15年度当初予算案に経費を盛り込んだ。被爆地で新たな証言のかたちが始まる。(田中美千子)

 講話会は平日は1回、土日曜・祝日や学校の夏休み期間は1日3回、いずれも定時に開く。外国人旅行者が多い時期を見計らい、さらに1回、英語による講話を増やす。会場は資料館の空き部屋。誰でも無料で、自由に聞けるようにする。伝承者の交通費(1日一律2千円)として292万円を予算案に計上した。

 1期生は108人。研修では1年目に原爆被害の実態を学び、2年目から被爆者の個別指導を受け、3年目から実習を重ねてきた。うち、全課程を終え、広島平和文化センター(中区)が任命するデビュー予定者は30~70歳代の男女。東京都、京都府、奈良県、兵庫県から通う人もいるが、大半は広島県内在住で、被爆者や市職員の最終チェックを受けている。

 その1人、被爆2世の山岡美知子さん(64)=南区=は「子ども世代として、被爆者が目の当たりにした原爆の恐ろしさを伝えなければ」と意気込む。指導した被爆者の岡田恵美子さん(78)=東区=は「戦争は駄目だと被爆地は訴え続けないといけない。被爆者の魂を伝えてほしい」と願う。

 市内の被爆者の平均年齢は78・93歳。「近い将来、被爆者に証言してもらえない時代が来る。今のうちに思いを継ぐ人材を育てたい」と市平和推進課。15年度も1期生の残りと2期生54人、3期生44人の研修を続け、新たに4期生も募る。

(2015年2月10日朝刊掲載)

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