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「黒い雨」相談 利用者半減 区域外巡回 本年度の日程終了 対象拡大要望 根強く

 広島県と広島市は12日、原爆の「黒い雨」に国の援護対象区域外で遭った人たちを対象とした巡回相談会を佐伯区湯来町で開き、2014年度の全日程を終えた。国の委託事業で始めて2年目。13年度より2回多い13回ながら、利用者は140人とほぼ半減した。健康不安を訴える住民は援護対象区域の拡大をなお求めており、「相談では不十分」との声も上がる。

 この日、利用者はわずか6人。保健師や医師が心身の悩みを聞き、定期受診や服薬などを助言した。近くの主婦佐々木友子さん(79)は、抱える甲状腺や目の病気を訴えた。9歳の時、町内で「服が黒くなるほど雨を浴びた」といい「真に願うのは相談事業じゃない。住民の苦しみを知り、対象区域を広げてほしい」と話した。

 国は爆心地から北西に広がる黒い雨「大雨地域」を援護対象区域に設定。雨に遭った住民たちに健康診断受診者証を発行し、特定の病気になれば被爆者健康手帳を交付している。一方、「小雨地域」をはじめ、区域外では援護はない。県や市などが区域を約6倍に広げるよう求めたが、国は12年に拡大を見送る代わりに相談事業を打ち出した。

 県と市が受託し、1年目は13年10月から半年で計11回開き、261人が利用した。しかし、2年目の14年度は落ち込み、利用者のうち新たな相談も83人にとどまった。市が市役所に常設している相談窓口の新たな利用も10人だった。

 ただ県、市は「一定の不安解消になっている」とみて15年度も事業を続ける。健診の自己負担分の助成なども含め、県市は当初予算案に計4994万円を盛り込んだ。相談に訪れた人の健康データを分析し、区域拡大の要請に活用する考えでいる。(田中美千子)

(2015年2月13日朝刊掲載)

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