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社説・コラム

『書評』 郷土の本 「鶴見橋」 ヒロシマへのまなざし詠む

 広島県歌人協会顧問の相原由美さん(76)=広島市南区=が、初めての歌集「鶴見橋」=写真=を編んだ。在韓被爆者支援に力を注ぎ、峠三吉たち原爆文学の顕彰にも取り組んできた相原さん。そうした活動の情熱やヒロシマへのまなざしが550首ににじむ。

 <四十年口にせざりし日本語にあふるるごとく被爆を語る>

 40代半ばで、韓国人徴用工の救済に尽力した被爆者で歌人の故深川宗俊さんに師事した。

 <鶴見橋わたり真直の道を行くヒロシマの死者の影に添いつつ>

 自宅から平和大通りに向かう時に渡る橋が特別に思え、歌集の題名にもした。

 夫の転勤をきっかけに広島で暮らして半世紀。相原さんは「広島で出会った多くの人たちとの記録でもある」と語る。帯には、1月に亡くなった詩人御庄博実さんの言葉も添えられている。223ページ、3240円。不識書院。

(2015年2月15日朝刊掲載)

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