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アラビア語版「ゲン」完成 エジプトの教授が翻訳 第1巻現地で刊行

 被爆後の広島を生きる少年を描いた、漫画家中沢啓治さん(1939~2012年)の代表作「はだしのゲン」を、エジプト・カイロ大のマーヒル・エルシリビーニー教授(55)=日本語学=がアラビア語に翻訳した。1月に現地の出版社から第1巻を刊行。「核兵器の恐ろしさと、平和を願う広島の人たちの願いを伝えたい」と話している。(明知隼二)

 アラビア語版はB6判よりやや大きい判型で271ページ。初版2千部で、1冊当たり40エジプトポンド(約600円)で販売する。

 エルシリビーニー教授は「作者が肌で感じた被爆の実態が絵ではっきりと分かる」と作品の意義を強調。子どもにも読んでもらえるよう平易な言葉を使うように心掛けたという。また、「報国」など戦時の言葉、広島弁独特の言い回しについては、カイロ日本人学校長を務めた平野幸三さん(75)=廿日市市=たち複数の知人にメールで質問を重ね、昨年5月からの約2カ月間で翻訳を仕上げた。

 1992年に広島大で博士号を取得し、帰国後はカイロ大に勤める。被爆体験記の翻訳を「広島への恩返し」と位置づけ、12年には「ひろしまを語り継ぐ教師の会」の手記「語りびと」を翻訳した。「ゲン」の翻訳では、昨年4月に国際交流基金(東京)の助成事業に応募し、採択された。

 「中東が混乱期を迎える中で核兵器が使われてしまうことのないよう、実態を中東の人たちに知ってもらいたい」と話す。2巻以降も順次翻訳するという。

 「ゲン」は、これまでに絵本版を含め21の言語に翻訳され、中東では13年にペルシャ語版も出版された。

(2015年2月16日朝刊掲載)

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