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原爆ドーム南200メートルに移転計画 市担当者交え討論会

平和と食文化を発信 広島市と「かなわ」

祈りの場に適さない 反対の市民団体 かき船

 広島市中区の元安川にある船上飲食店、かき船「かなわ」の原爆ドーム南約200メートルへの移転計画をめぐって論争が起きている。市とかなわ側は歴史も踏まえて「平和と食文化を発信する」とPR。反対の市民団体「かき船問題を考える会」は「平和を祈る場にふさわしくない」として16日、計画撤回を市に求めるよう市議会に陳情した。経緯やそれぞれの主張を見る。(菊本孟)

■経緯

 かなわは1963年から、平和大橋下流で営業。91年の台風19号で流されて平和大橋にぶつかり橋脚の一部が破損する事故が発生した。国土交通省太田川河川事務所は毎年度の占用許可の更新時などに安全対策を求めてきたが、指導を強化。2013年3月、「問題を解決しない場合」に14年度の許可を出さない方針を通知した。

 かなわは水がほとんど流れない死水域への移転を検討し、デルタ地域にある2カ所のうちレストハウスの対岸を選択。市も認めた上で国が昨年12月に移転先の占用を許可した。

 現在地も移転先も世界遺産原爆ドームのバファーゾーン(緩衝地帯)に含まれる。死水域のもう1カ所には別のかき船が移転を検討している。

■市とかなわの 見解

 市は、河川法の準則や美観形成要綱などを踏まえ適切に対応したとの立場を貫く。「水の都ひろしま」構想にも合致。既に移転先上流の河岸緑地には飲食店が立地しており、遊覧船の船着き場もあるとする。

 原爆資料館(中区)が収蔵した38~39年ごろの移転先付近の絵では「かき舟」と記した屋形船も描かれている。かなわは「江戸時代から続いてきた、かき船の文化を絶やしたくない」と移転に理解を求める。平和団体との連携や情報発信に取り組むつもりという。

■反対の理由

 考える会は平和活動に関わる市民たちで1月につくり、街頭署名に取り組んでいる。共同代表で日本基督教団牧師の宗藤尚三さん=安佐北区=は「かき船がドームに近づけば慰霊や核兵器廃絶を願う心を薄めかねない」と説明する。付近に原爆犠牲者の慰霊碑がある点も理由に挙げる。

 世界遺産選定の調査や評価に当たる国際記念物遺跡会議(イコモス)の国内組織、日本イコモス国内委員会(東京)も1月、強い懸念を示した。

 一方、市民には説明が不十分なまま手続きが進んだとの不満もあるという。考える会は22日午後2時半から、西区観音町の生協けんこうプラザで、市の担当者との討論会を開く。一般参加可能で無料。同会Tel082(261)4423。

(2015年2月17日朝刊掲載)

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