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【ナガサキ情報~西日本新聞から】檀家から体験募り被爆・戦争証言集 長崎市の光源寺 進む高齢化「今、残さなければ」

 終戦と被爆から70年を迎える今年、戦争の記憶を後世に残そうと長崎市伊良林の光源寺は檀家(だんか)から体験談を募り、証言集作りを進めている。被爆60年の2005年に続く証言集づくりだが、戦争を体験した檀家の高齢化が進み、証言者は年々減り続けている。一方で「今だからこそ、残しておきたい」と、新たな証言も寄せられ始めている。

 寺は10年前「光源寺門信徒の戦後六〇年 戦争そして原爆 その悲しみを越えて」を作成。今回は昨年から募集を始め、これまでに被爆体験や、真珠湾攻撃に参加した軍人の手記など約30人のさまざまな体験談が寄せられている。

 前回は37人が手記を寄せたが、この10年で体調の悪化や他界するなどして約半数は話を聞くことができなくなったという。顔のケロイドで、差別に苦しみながらも語り部として核兵器廃絶を訴え続けた吉田勝二さん(10年死去)など、今となっては証言できない人の手記も、前回の証言集から再録する予定だ。

 発起人となった被爆者で同寺の前住職、楠達也さん(76)は「たった10年でこんなに減ってしまう。これから10年はもっと減る。今、残しておかないといけない」と危機感を募らせる。

 楠さんは10年前、檀家の男性から「今年は戦後60年ですが、お寺では何かされるのですか」と尋ねられたのが証言集づくりのきっかけと言う。「お寺は過去の戦争に対し何をするのか、問われているように感じた」という。

 5歳で被爆し「特別な体験ではないと思うが、1人の人間として幼い頃の思い出を残したいと思った」と話す内川雅夫さん(75)など、呼び掛けに応じて。初めて手記を寄せる人も出てきた。

 「被爆70年から80年に向けての準備が始まる。次の10年で、私も含め直接の体験者がいなくなると思う」と楠さん。「語り部など特別な事をしなくてもいい。あの悲惨な出来事を二度と起こさないために、体験者は家族など身近な人たちに語り続けてほしい」と訴えている。

(西日本新聞・坂井彰太)

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