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CGと英語 ヒロシマ発信 広島の田辺さん 映画 国連寄贈へ

 原爆投下前の広島の街並みをコンピューターグラフィックス(CG)で再現している広島市西区の映像作家田辺雅章さん(77)の新作映画「知られざるヒロシマの真実と原爆の実態」の英語短縮版が18日、完成した。被爆70年を機に、5月にも国連に寄贈する。世界で平和教育に役立てるよう呼び掛ける。

 約40分の短縮版は、広島県産業奨励館(現在の原爆ドーム)の東隣にあった田辺さんの生家のCGから始まる。水主町(現加古町)にあった県庁、小網町周辺の遊郭「花柳街」などの被爆前の風景、買い物客でにぎわう市場などをCGで再現。被爆後の様子は主に写真や絵画で表現した。

 被爆者約30人の証言も交えた。「母は座った状態で真っ黒に焼けていた」「妹の『助けて』という声が聞こえたのに助けられなかった」など、壮絶な証言を盛り込むことで「究極の悲しみを訴えたかった」(田辺さん)という。

 原爆で父母と弟を失い、自身も入市被爆した田辺さんは1997年、復元CGを作り始めた。6作目となる今作は「復元」シリーズの集大成とする考え。6月に日本語版の本編(60分)を完成させる予定だ。

 田辺さんはこの日、編集が進められていた福山市内の映像スタジオで出来栄えを確認。「原爆は地域に根付いた歴史や伝統文化までを奪ったことを知ってほしい」と話した。(加納亜弥)

(2015年2月19日朝刊掲載)

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