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社説・コラム

『やまびこ』 硫黄島 遺族の願い切実

 ちょうど70年前の2月19日に始まった硫黄島の戦い。太平洋戦争末期の激戦地で父を亡くした安芸高田市甲田町の主婦山広信子さん(70)が9回目となる遺骨収集活動に参加するため、今月24日から現地を再訪する。

 昨年11月、山広さんが活動の様子を伝える写真展を開いた際に聞いた話が今も耳に残る。遺骨が眠る地下壕(ごう)内の温度は50度以上。シャベルやつるはしで30分掘るたびに15分の休憩を取る過酷な作業だ。

 県内からは遺族十数人が定期的に足を運ぶが、高齢化でその数は年々減っている。島内にはまだ約1万体が眠っているとされ、遺族の中には、若い世代の協力を望む声が強いという。

 山広さんも「いつまで続けられるか分からない」と不安を募らせる。遺族の思いが、一人でも多くの若者に届くことを願わずにはいられない。(瀬良友和)

(2015年2月19日朝刊掲載)

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