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中電、土地の一部買収 上関原発計画 準備工事中断の中 14年 少なくとも2件

 上関原発(山口県上関町)建設計画の準備工事を中断している中国電力が、建設予定地内で取得できていなかった土地の所有権の一部を2014年に少なくとも2件、買い取っていたことが21日、分かった。政府が原発新増設を明確にしていない中でも、計画再開を前提に住民から買収を進めていた。

 関係者や登記簿によると、建設予定地約160万平方メートルの中にある上関町長島のいずれも山林。14年5月に1筆1764平方メートルの所有権の持ち分60分の1を、9月に1筆4935平方メートルの所有権の同25分の1を、それぞれ購入していた。中電は購入額を含む個別の契約について、詳細を明らかにしていない。

 5月に取得したのは、反対派住民約50人で共同所有するため04年に移転登記をした土地だった。9月分は中電と住民3人で権利を共有していた土地。それぞれそのうち1人の所有者・相続者から買い取った。

 中電は11年3月、福島第1原発事故を受け、「地元住民に説明することを最優先に取り組む」として準備工事の中断を決めた。その3カ月後、共有登記した住民1人から所有権を買い取っていたことも分かった。

 反対運動のため土地共有に取り組んだ広島市の市民団体「原発はごめんだヒロシマ市民の会」の木原省治代表(66)は「政府の方針が定まっていない中、原発建設の動きを進めるのは許せない」と批判する。中電上関原発準備事務所は「上関原発の重要性は変わらない。理解いただいた方から購入した」としている。

 政府は14年4月、原発再稼働の方針を明記したエネルギー基本計画を閣議決定。新増設の是非には触れていない。(井上龍太郎)

(2015年2月22日朝刊掲載)

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