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「外交交渉 本腰を」 「竹島の日」式典 政府へいらだちの声

 島根県条例が定めた「竹島の日」の式典は22日、10回目を迎えた。あいさつした政府代表を含む国会議員計7人はこぞって条例制定の意義や成果を強調し、問題解決に力を尽くすと誓った。一方で、竹島が属する隠岐の島町から駆け付けた町民たちは、10年たっても変わらない現状に「言葉だけでなく韓国との外交交渉に本腰を」といらだちの声を上げた。

 「オールジャパンで竹島を取り戻す」「領土問題解決のモデルをつくる」…。1時間10分の式典のうち約40分が来賓の国会議員のアピールに割かれた。松本洋平内閣府政務官も、領土担当相の設置など政府の成果を並べた。だが式典後、政府の式典主催の意向を問われると「諸般の状況を踏まえ検討していきたい」と答えるにとどまった。

 「立派なことはおっしゃるが、実際にやっていることとギャップがある。新日韓漁業協定の見直しなど取り組むべきことはある」。同町の松田和久町長は微動だにしない外交交渉に、政府への不満を隠さなかった。

 同町では、かつてアワビやサザエの好漁場だった竹島周辺での操業再開を期待する声が多い。だが韓国が実効支配しているため近づけず漁を制限されているのが現状だ。隠岐島漁連(同町)の浜田利長会長(76)は「韓国と交代でもいい。少しでも隠岐の漁業者が漁をできるよう具体的なアクションを起こしてほしい」と政府に求める。父親が1938年まで竹島周辺で漁をした同町の県嘱託職員八幡智之さん(62)も「本当の成果」を期待する。

 式典に続く座談会では、下條正男拓殖大教授が「なぜこの10年で解決しなかったのかを考えないといけない」と指摘。日本の領土を守るため行動する議員連盟(約150人)会長の新藤義孝衆院議員は「言葉で終わらせるわけにはいかない」と強調。韓国との交渉で歴史の事実を示すため、国が研究機関を設置するべきだと主張した。

 ことしも式典会場周辺は異様な雰囲気に包まれた。県警によると、約100団体が街宣活動し警官約740人で警戒した。式典反対の活動を試み団体に取り囲まれた韓国の市民団体のメンバーたち5人を、県警が保護する一幕もあった。会場近くの会社員石田和彦さん(36)は「日韓両政府は話し合いの場を持つ努力をするべきだ。市民同士が冷静で建設的な議論をしたい」と話した。

(2015年2月23日朝刊掲載)

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