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本川小児童 感謝の書画集 復興支援の元GHQ職員に寄贈 ハワイの日本センターに現存

 爆心地に最も近い小学校の本川小(広島市中区)の児童が戦後間もないころに手掛け、学校の復興を支えた米国人の元連合国軍総司令部(GHQ)職員ハワード・ベル氏(1897~1960年)に贈った書画集が、米ハワイ・ホノルル市のハワイ日本文化センターに現存していることが分かった。ベル氏の遺族が「平和の尊さを伝える資料を広く共有したい」と寄贈していた。(田中美千子)

 台紙に貼った絵30点と書13点。表紙には「HONKAWA SCHOOL」の学校名と草原の絵が描かれている。体育の授業や掃除の様子などの日常を生き生きと表現したり、「平和の日本」「世界永遠平和」などの言葉を墨書したりしている。児童の名前や学年から、被爆2年後の47年ごろの作品とみられる。

 同センターはこれとは別にもう1冊、遺族から寄せられた作品集を所蔵。表紙に「昭和二十七年五月五日」とあり、ベル氏が52(昭和27)年に同小を訪れた際、本川小から贈られたとみられる。

 ベル氏は米国教育協議会に勤める傍ら、米青少年赤十字団東部地区長を務め、戦後、GHQ民間情報教育局の職員となった。本川小に残る資料によると、47年1月、爆心地から約400メートルの同小を初めて視察。当時の中国新聞は、ベル氏が児童の窮状に心を痛め、現金2500円と、米国から持ち込んだ鉛筆や色鉛筆を贈ったと報じている。

 ベル氏はさらに、母国の教会などにも被爆地支援を呼び掛けた。ワシントンのオール・ソウルズ・ユニテリアン教会は文具や運動具を同小へ寄贈。児童が48年に返礼として贈った書画の一部は2010年、学校に「一時帰国」し、展示された経緯がある。

 ベル氏に贈られた書画集は、おいの元小学校長ボブ・ホワイティングさん(77)=ワシントン州=が譲り受け、教え子にも見せてきた。2013年、当時住んでいたハワイから転居する際にセンターに寄贈、来館者の求めに応じて公開されているという。「伯父は罪もない市民を犠牲にした原爆投下に賛同していなかったと思う。何とか役に立ちたかったのだろう。多くの人が作品に触れ、平和のメッセージを感じてほしい」と期待する。

 資料の存在を知った本川小卒業生らも喜んでいる。3年生の時の書があった神奈川県大和市の門田(旧姓泰田)芳永子(かえこ)さん(75)は「ベルさんは背が高く、優しそうだった。一緒に写真も撮った」と懐かしむ。和紙には「世界の子ども」とつづった。「何もない時代にもらった鉛筆やクレヨンがどんなにうれしかったか。両国の子どもが友情を育める平和が続いてほしい」と願っている。

(2015年2月23日朝刊掲載)

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