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福島原発事故 ヒロシマの蓄積活用 周辺住民の健康 長期調査

■記者 金崎由美

 福島第1原発事故を受け、広島大など全国の放射線の研究機関が加盟する放射線影響研究機関協議会が原発周辺住民の健康を長期的に追跡調査する方針を決めたことが26日、明らかになった。対象は最大で数十万人規模になるとみられ、広島と長崎で被爆者の健康影響調査を長年続けてきた放射線影響研究所(放影研、広島市南区)がノウハウを提供する。

 協議会は放射線研究機関の連携が目的の組織で、放影研と広島大をはじめ、長崎大、京都大、放射線医学総合研究所(千葉市)、環境科学技術研究所(青森県六ケ所村)の計6機関で構成する。

 研究機関や自治体が個別に調査するのではなく、大規模に統一した追跡調査により精度を高める狙い。調査は、放射線が原因とみられるがんなどの症状は後になって表れるため数十年間継続する。また被災者が全国各地に転居した場合に備え、国にも協力を求める。

 協議会は近く調査対象の住民の範囲や着手時期などについて会合を開いて協議する。放影研は、被爆者の追跡調査に使っている調査票を基に福島でどのような調査項目が必要かを検討。具体的な方法や統計学的な解析方法などを提案する。

 放影研は、前身の原爆傷害調査委員会(ABCC)の1950年代から、広島と長崎で放射線が人体に与える長期的な影響を調査。12万人を対象に死因やがんの発症率を調べる「寿命調査」や、2万3千人を対象に病気の発症と被曝(ひばく)線量の関係を調べる「成人健康調査」を継続している。研究成果は世界の放射線防護基準の基礎データとなっている。

 寺本隆信常務理事は「チェルノブイリ原発事故と同じレベル7の重大事故だけに、専門機関が協力して住民の健康管理を長期でフォローすることが必要だ。被爆地の研究の蓄積を生かしたい」と話している。


健康 長期調査 広島知事も国に提案へ


■記者 荒木紀貴

 湯崎英彦広島県知事は26日の全国知事会議で、福島第1原発の周辺住民や事故処理に当たった作業員の健康追跡調査を国に提案する考えを表明した。被爆者医療などで蓄積のある被爆地として協力していく方針も示した。

 東日本大震災に関する意見交換で、湯崎知事は「科学的に信頼性の高い健康追跡調査をすることが健康不安の軽減に役立つ。数十年にわたって継続することが必要だ」と発言。国内外の研究者による独立した体制の必要性を訴え「広島には経験と蓄積があるので最大限の協力、貢献をする準備がある。国に提案したい」と述べた。

 湯崎知事は会議終了後、広島大原爆放射線医科学研究所などの実績を挙げ「われわれは健康追跡調査の受け皿になれる」と強調。首相官邸に要請する考えを明らかにした。

(2011年4月27日朝刊掲載)

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