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社説・コラム

美術散歩 向き合う人間の「生」

 「人の場を求めて Places We Seek」 3月3日まで。広島市中区袋町、旧日本銀行広島支店

 東日本大震災から間もなく4年、広島は被爆から70年を迎える。変化する環境、社会の中で、私たちはどんな「場」を生きているのだろう―。広島市立大芸術学部の松尾真由美講師の呼び掛けに応えた広島や福島ゆかりの作家10人によるグループ展だ。

 企画は一昨年から温めてきた。実現する前に亡くなった吉村芳生(2013年に63歳で死去)の鉛筆画作品のほか、20~60代の作家が人間の「生」に向き合った油彩画や彫刻、インスタレーション約40点が並ぶ。

 山本伸樹「メッセージⅡ」は一見、一輪車で運ばれるがれきの山。近づくとセメントで作った無数のこぶしがひしめく。原爆や原発事故への怒りや悲しみが伝わってくる。

 10人が被爆建物のそれぞれのスペース(場)を使い、異なる手法で、記憶や痛みを表現している。それらは無関係のように見えて全てつながっている。脈々と続く生命の歴史の中で。=敬称略(森田裕美)

(2015年2月27日朝刊掲載)

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