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三隅2号新設申し入れ 中電、18年11月にも着工

 中国電力は27日、火力の三隅発電所(浜田市)2号機の新設前倒しを、島根県と同市に申し入れた。老朽化が進む管内火力の代替電源と位置付け、2027年度以降としていた稼働時期を22年11月に早め、18年11月にも着工する。出力は従来の40万キロワットから100万キロワットに引き上げた。県は市や県議会の同意を得て3月9日以降に了承する見通し。  申し入れは11年に中電が県、市と結んだ覚書に基づく。この日、中電島根支社長の渡部伸夫常務が県庁の地域振興部を訪問。23年度末時点で、運転開始40年以上の火力発電所が14となり、管内の全25火力発電所の出力の約半分に上る見通しを報告し、「島根原子力発電所(松江市鹿島町)の稼働を前提に、老朽化した火力発電所の代替として2号機を前倒ししたい」と述べ申し入れ書を提出した。中電は浜田市にも同様に申し入れた。

 中電は16年に迫った電力小売り全面自由化をにらんで一時、2号機新設を前倒して関西電力への供給を検討した。だが、島根原発で目指す2号機再稼働との矛盾を県議会に指摘され断念した。今回は「三隅2号機の電力は全量を自社向けに使う」としている。

 中電は県の回答を待って建設準備に入る。溝口善兵衛知事は「今後、地元浜田市の意向を聞いて適切に対応したい」とコメントした。(川井直哉)

三隅発電所
 石炭を主な燃料とする。1号機(出力100万キロワット)は1998年に運転開始。2号機は当初、出力40万キロワットで2004年に運転を始める計画だったが、01年に07年へと延期。その後も17年度、27年度以降へと計3度延期した。関電への供給構想では、21~23年に早める検討をしていた。

島根県・経済界は歓迎の声 三隅火電2号機新設・前倒し申し入れ 市民団体は必要性問う

 中国電力が火力の三隅発電所(浜田市)2号機の新設前倒し計画を県、市に伝えた27日、地元経済界などからは、歓迎の声が相次いだ。市民団体は島根原子力発電所(松江市鹿島町)の再稼働を目指しながらの計画に、中電への不信感を募らせた。(森田晃司、川井直哉)

 中電の計画に、県地域振興部の西山彰部長は「実現すれば地域経済が活性化する」と歓迎。浜田商工会議所の岩谷百合雄会頭も「待ちに待った2号機の建設」と喜ぶ。

 2号機は当初、2001年度着工の予定だったが、電力需要見通しの変化などを理由に中電が再三延期し、これまでは24年度以降の着工となっていた。県は浜田、益田市や地元経済界と早期着工を求めていた。

 早期着工を求める背景には、建設による活性化だけではなく、定期検査による経済波及効果がある。浜田市によると、1998年に運転を始めた1号機は00年から1年置きに定期検査し、12年4~7月の定期検査では95日間で延べ10万5千人の関係者が発電所を訪れた。三隅発電所の固定資産税は14年度だけでも約6億1千万円と市税の1割近くを占める。

 同市の久保田章市市長は「作業員が長期滞在し、浜田と益田両市に宿泊する。地域経済へのメリットは大きい」と期待する。

 一方、建設に反対し環境監視活動を続ける浜田市の「三隅火電を考える会」の川方敬太郎副代表(69)は「二酸化炭素削減に向かう世界の動きに逆行」と批判。反原発を掲げる市民団体「平和フォーラムしまね」(松江市)の杉谷肇代表(73)は「電力不足のため原発が必要と言っていたのに、火力発電所の増設はつじつまが合わない」と指摘。「中電は原発再稼働についてあらためて県民が納得できる説明をするべきだ」としている。

(2015年2月28日朝刊掲載)

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