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社説・コラム

天風録 「サンゴ受難」

 35年とは長いような、短いような。連れ添った期間ならばどうだろう。金や銀のほか、珊瑚(さんご)婚式というのもあるそうだ。サンとゴの語呂合わせだろうが、荒波越えた歳月を思わせてぴったり。さて当のサンゴはどれほど育つのか▲宝石サンゴの成長は、1年で1ミリ足らずとの研究がある。一方、岩礁をつくる種類は早いという。大きくなるだけではない。美しい海に広がるサンゴ礁は、魚たちが集い、すまう「森」となる。わが家もかくありたい▲ところが沖縄の海ではコンクリートの塊に踏みつぶされたらしい。米軍飛行場を移そうと、工事が進む辺野古沿岸。沖縄県が確認したものの、国は粛々と建設を進めるという。県外へ移設を望む大勢の声も踏みつけて▲61年前のきのう、サンゴが白い灰となって南の海に降り注ぐ。ビキニ環礁の核実験で破壊されて舞い上がったもので放射能を帯びていた。第五福竜丸の他にも被曝(ひばく)した船や人の状況が、ようやく明らかになりつつある▲中国が人工島を築いたり、密漁したり。サンゴの受難はあちこちで続いている。母なる海を人間は一体どうするつもりなのか。波風立てずいたわらなくては、長く連れ添ってくれるはずもない。

(2015年3月2日朝刊掲載)

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