×

ニュース

島根原発1号機廃炉へ 中電 延長 採算見込めず 月内正式決定

 中国電力が今月下旬の取締役会で、運転開始から41年になる島根原子力発電所1号機(松江市鹿島町、出力46万キロワット)の廃炉を正式に決めることが4日、分かった。運転延長も検討したが、安全対策工事に巨額の費用がかかり、採算が見込めないと判断した。社内で決定後、地元に説明する。(山瀬隆弘)

 東京電力福島第1原発の事故を受け、原子力規制委員会は各電力会社の原発の運転期間を原則40年に限定した。例外として20年の延長が可能だが、原発の新規制基準への適合が必要なだけではなく、通常より厳しい「特別点検」の実施が条件になる。島根1号機をはじめ、すでに運転開始から40年を超えている原発が運転延長する場合には、ことし7月までに特別点検を終えるよう求めていた。

 中電は原子炉圧力容器の劣化を超音波などで調べる特別点検の費用や、フィルター付き排気(ベント)設備の設置など規制基準への適合で不可欠な安全対策の投資額を精査してきた。1号機の出力は最新型の原発の3分の1にとどまり、運転を延長できたとしても期間は限られるため投資に合わないと考えた。

 国も各電力会社が老朽原発の廃炉を判断しやすいように制度改正を急いでいる。経済産業省は月内に、廃炉に伴う原発設備の資産価値の減少を抑える新会計ルールを導入する。

 中電は毎年3月下旬に、新年度の経営計画を公表している。新会計ルールの導入が間に合えば、今月末に発表する2015年度の経営計画に盛り込むとみられる。同社の広報部門は「現時点では、引き続き検討を続けている」としている。

島根原発1号機
 国産第1号の原発として、1974年3月29日に運転を始めた。事故を起こした福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉。原子炉機器の点検不備問題を受け、2010年3月に運転を停止。そのまま同年11月に定期検査に入り、5年近く止まっている。

【解説】前例ない作業 地元と対話を

 中国電力が島根原発1号機を廃炉にする方針を固めたのは、「経済性」を重視したためだ。1号機の出力は小さく、今後の島根2、3号機の稼働をにらんだ経営判断でもあるだろう。

 だが、廃炉作業は経済性の観点だけでは考えられない。国内ではまだ廃炉を終えた商業原発はない事実を踏まえ、中電は安全に、着実に作業を進めてほしい。

 国は廃炉の期間を20~30年程度と想定するが、時間、費用とも今の想定以上に膨らむとの指摘がある。1998年に運転を終えた茨城県の東海原発も、まだ原子炉本体の解体に着手できていない。

 最大の課題は、使用済み燃料と解体に伴う放射性廃棄物の貯蔵、処分だろう。先進地の欧州でも、長い時間をかけた論争が避けられない難題だ。島根1号機も、現時点でそれらを敷地から運び出す先は事実上ない。立地地域だけでなく、電力の恩恵を受けた供給地域全体での議論が必要ではないか。

 これまで国や電力業界は原発の安全や必要性を語るほど、負の側面を十分に説明してきたとは言いがたい。中電には、初めての廃炉作業について地元と十分に対話をしてもらいたい。(山本洋子)

(2015年3月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ