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国のルール変更 呼び水 島根原発1号機廃炉へ 

 島根原子力発電所1号機(松江市鹿島町)の廃炉を月内に正式決定する中国電力。これまで運転延長と両面で検討していた同社が、なぜ廃炉を選んだのか。今後、どんな手続きを経て、具体的な作業はどうなるのか。判断の背景と、今後予想される課題を見る。(山瀬隆弘)

なぜ決断 10年で償却可能に

 中電が廃炉に傾いたのは、国が老朽原発の廃炉を促す目的で進める会計ルールの変更が大きい。

 経済産業省は今月、廃炉決定時の電力会社の負担を小さくする会計ルールを導入する。現行ルールでは、廃炉決定と同時に原発の発電機やタービン、核燃料などの資産価値がゼロになる。同省の試算では、電力会社は1基当たり210億円程度の損失を計上する必要があった。新ルールは、これを平準化。10年かけて償却できるように改める。

 経産省が昨年10月、老朽原発の廃炉判断を電力業界に促した際も、電力会社でつくる電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)が会計上の問題を指摘。「廃炉が円滑に進められるよう検討してほしい」と求めていた。中電も「単年度収支に与える影響が大きく違ってくる」とルール改正を注視してきた。電力業界の意向に沿った新ルールの導入が決まり、廃炉の判断がしやすくなった。

今後の手続き 工程表を申請へ

 中電が廃炉の正式決定後に最優先で取り組むのは、地元自治体への説明だ。その後、経産省などへ廃炉を届け出る。さらに、使用済み核燃料の取り出しや配管の除染、解体といった廃炉作業を進めるため、具体的な工程をまとめた「廃止措置計画」を原子力規制委員会に申請する。

 松江市の松浦正敬市長は1月、原子炉を解体する際に必要になる事前了解の時期を「解体作業の工程表が出される前後になるのでは」と発言。中電も廃止措置計画を地元に説明し、了解を得る方針だ。

具体的作業 課題は山積「長く続く」

 中電にとって、廃炉は未知の分野だ。廃炉作業に必要な期間は20~30年といわれ、このうち放射性物質の減少を待つ「安全貯蔵」に5~10年が必要とされる。国内には、まだ作業を全て終えた商用原発はない。想定通りの20~30年で終わるかも不透明である。

 廃炉を進めれば、放射性廃棄物をどう処分するかという課題にも直面する。国は高レベル放射性廃棄物を最終的に地中300メートルより深く埋める方針だが、候補地すら決まっていない。ある中電の幹部は「廃炉を決めても、終わるわけじゃない。その後のことを考えないといけない。処理は長く続く」と受け止めている。

(2015年3月5日朝刊掲載)

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