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丸木夫妻の絵 公開修復へ 広島市現代美術館「原爆-ひろしまの図」

 広島市現代美術館(南区)は、ことしの被爆70年に合わせ、所蔵する丸木位里・俊夫妻の「原爆―ひろしまの図」を同館で公開修復する。同時に年間を通じ、企画展「ヒロシマを見つめる三部作」を開く。多角的に被爆体験を見詰め、継承する道筋を探る。

 丸木夫妻が1973年に制作した「原爆―ひろしまの図」(縦4メートル、横8メートル)は被爆の惨状を表現。広島市が制作を依頼し、現在の原爆資料館東館に常設展示されていたが、89年に所管が同美術館へ移った。紙に岩絵の具で描かれているが、黒色の部分が薄くなるなど剝落が見られるという。

 修復は、同美術館地下のスタジオで7月下旬から9月にかけて実施。来場者が近くで見学できるようにする。「ヒロシマを伝える貴重な作品を展示するだけでなく、大切に保存する場としての美術館の役割も感じてほしい」と同館。

 修復作業と並行して、7月18日から9月27日まで開く企画展の第1部は、「ライフ=ワーク」。自らの戦争体験や被爆の記憶に、生涯向き合わざるを得なかった作家たちの作品を紹介。香月泰男や殿敷侃(ただし)、入野忠芳のほか、被爆者が描いた原爆の絵や、祖父の被爆体験を描き続ける若手の作品も紹介する。

 第2部は原体験を離れ、空から見下ろすように、再生する被爆地を見詰める。「俯瞰(ふかん)の世界図」(10月10日~12月6日)と題し、吉田初三郎による「HIROSHIMA」の表紙原画や、丹下健三の平和記念公園の設計プランなどの展示を検討している。第3部は「ふぞろいなハーモニー」(12月19日~2016年3月6日)。中国、韓国、台湾などアジアの現代美術家が社会や歴史に向ける多様な視点が調和する空間を提示する。

 神谷幸江学芸担当課長は「記憶や作品自体の風化をどう食い止め、時代につないでいくのか、未来志向のアクションにしたい」と話している。(森田裕美)

(2015年3月6日朝刊掲載)

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