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『フクシマとヒロシマ』 内部被曝 独自に調査

■記者 下久保聖司

 福島第1原発事故を受け、長年被爆者医療に携わってきた医師2人が独自の現地調査を始めた。ヒロシマの知見を生かし、今何をするべきかを提言するのが狙い。「行政も住民も内部被曝(ひばく)を防ぐ意識を高めなければならない」と訴える。

 広島原爆被爆者援護事業団理事長の鎌田七男医師(74)と、わたり病院(福島市)の斎藤紀(おさむ)医師(63)。広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)勤務当時に上司だった鎌田医師が調査を持ち掛けた。

 2人は放射性物質が流れ集まる雨どいに着目。飯舘村と川俣町の「計画的避難区域」の民家計5軒の排出口で、国の測定法と同じ地上1メートルと、独自に10センチで測定した。

 このうち飯舘村の1軒では高さ1メートルが毎時13.0マイクロシーベルトで、国の発表値の約4倍を検出。10センチでは毎時47.0マイクロシーベルトに達した。福島市中心部の広場の砂や、飯舘村の田んぼでも線量調査をした。

 鎌田医師はフクシマが今直面している危険は、広島で家族などを捜すため爆心地付近に入った「入市被爆」と同じような状態と確信。内部被曝を防ぐ対策が急務と訴える。

 原発から放出されたセシウム137やヨウ素131の生物的半減期(吸収量の半分が尿などで排出されるまで)は約100日。被曝線量を客観証明するには尿検査が有効とされており、斎藤医師は「住民の協力と理解を得ながら進めたい」と話している。

内部被曝
 呼吸や飲食、傷口などから放射性物質を体内に取り込むことで起きる被曝。尿などで排せつされるまで恒常的に被曝が続き、がんを誘発するとされる。放射性物質によって集まる組織や臓器に特徴があり、ヨウ素131は甲状腺、セシウム137は筋肉などにたまりやすい。

(2011年5月8日朝刊掲載)

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