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『フクシマとヒロシマ』 福島第1原発 周辺15万人 30年健康管理

■記者 下久保聖司、山本洋子、河野揚

 福島第1原発事故を受け、福島県と福島県立医科大が広島大や長崎大、放射線影響研究所(放影研、広島市南区)などの協力を得て、周辺住民約15万人を30年以上にわたって健康管理する方針を固めたことが、9日分かった。今週末に福島市内で関係機関の会合を開き、細部を詰める。

 複数の関係者によると、広島大と長崎大、放影研、放射線医学総合研究所(千葉市)の4機関が調査のノウハウを提供。福島県立医科大に活動拠点を置くという。

 対象エリアは、原発から半径30キロ圏内や大気中の放射線量の高い地域で、全住民を長期モニターする。定期的な健康診断を柱に、事故後の生活状況などを聞き取る。住民が転居するなどして追跡調査が困難になる可能性もあるため、早期着手を目指す。

 広島、長崎では、米国が1947年設置した原爆傷害調査委員会(ABCC)が被爆者の健康状態を調べ始め、75年に放影研が引き継いだ。約12万人の追跡調査から、被曝(ひばく)線量が高いほど白血病を含むがんの発症率が高いことなどが分かっている。

 大規模集団でモニターすることについて、健康管理に加わる専門家の一人は「早期に発見できれば早期治療が見込める。また将来、がんなどの病気になった時の因果関係の証明に役立つ」とメリットを説明する。

 今後は、住民の協力をどう得るかや、個人情報の保護などが課題になるとみられる。

(2011年5月10日朝刊掲載)

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