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原爆・平和もテーマに 松谷みよ子さん死去 被爆地から悼む声

 2月28日に89歳で死去した児童文学作家の松谷みよ子さんには原爆や平和を題材にした作品も多かった。被爆地の児童文学者や交流があった関係者から悼む声が相次いだ。

 松谷さんが役員を務めていた日本児童文学者協会の広島支部代表の三浦精子さん(78)=広島市中区=は「戦後の児童文学をずっと背負ってきた方。切ない」と漏らした。原爆で亡くなった少女をめぐる幻想的な物語で、原爆の惨禍を伝える「ふたりのイーダ」は1969年の出版。「避けられていた題材を、勇気を出して描いた」と三浦さん。「いつも広島を気に掛け、自分の問題として捉えようとしていた」と語る。

 松谷さんは2009年6月、広島市出身の児童文学者、鈴木三重吉の命日に同市を訪れ、講演した。松谷さんが師事した坪田譲治は三重吉の弟子でもある。講演では、原爆で亡くなった子どもを描いた絵本「まちんと」を朗読。鈴木三重吉赤い鳥の会の長崎昭憲会長(68)=同=は「子どもの悲劇を分かりやすく描いてくださった。松谷さんの思いを次世代に伝えていくことが大切だ」と力を込めた。

 絵本「ミサコの被爆ピアノ」は、爆心地から1・8キロの民家で被爆したピアノが題材。このピアノを再生し、06年に松谷さんから取材を受けた調律師の矢川光則さん(62)=同市安佐南区=は「亡くなられても、絵本は後世まで読み継がれていく。大きなものを残してくださった」。

 広島市出身の歌人東直子さん=東京都=は「昔話の再話の仕事には、大きな影響を受けた。さまざまな人の心の中に眠っているものを引き出す、まれな作家だったと思う」と惜しんだ。(石井雄一)

(2015年3月10日朝刊掲載)

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