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福島原発事故 警戒区域 一時帰宅始まる 川内村92人

 福島第1原発から半径20キロ圏内の警戒区域にある福島県川内村の住民54世帯92人が10日、警戒区域に入り一時帰宅した。警戒区域に指定された9市町村で初めてで、避難が長期化する住民の要望に応えた。滞在は約2時間。92人全員が放射性物質の除染の必要がなく、除染した持ち出し品もなく、無事終了した。

 滞在時間が短いと訴える住民が多く、リスク回避との兼ね合いの難しさが浮き彫りに。長時間、特殊な防護服を着用したことなどから多くの人が疲れた様子で、健康管理も課題になりそうだ。

 政府の現地対策本部によると、滞在中に受けた個人の累積放射線量は暫定値で最低1マイクロシーベルト、最高で10マイクロシーベルト。女性3人がセンターに戻った際、体調不良を訴えたがすぐに回復した。住民は年配者が多く最高齢は85歳。持ち出し品用の透明の縦横約70センチのポリ袋には、衣類を入れた人が目立った。一時帰宅した場所付近の空間放射線量は毎時0.12マイクロシーベルトから5.80マイクロシーベルトだった。池田元久経済産業副大臣は川内村で「車の持ち出しを優先的に実行したい」と表明。川内村の遠藤雄幸村長は「ほっとしている」と話した。

 福島県と環境省は、警戒区域内で犬9匹と猫3匹を保護し運び出した。

 住民は午前9時ごろに20キロ圏外の村民体育センターに集合。防護服を着て、政府が用意したバスに分乗し一時帰宅した。午後3時ごろ再びセンターに戻り、放射性物質が付着していないか確認するスクリーニング検査を受けた。検査は1人3~5分で終わった。

 また一時帰宅の実施前に国側が「(住民らは)自己責任で立ち入る」との同意書への署名を求め、住民らはサインしたが、紛糾する場面もあった。現地対策本部の担当者は同意書について川内村と相談して決めたとし「放射能汚染を含めたリスクが存在することを村民に了解してもらうことが目的」と説明した。

警戒区域
 災害対策基本法は、生命や身体への危険を防止するため必要な場合、市町村長が「警戒区域」を設定し、区域内への立ち入りを禁じたり、退去を命じたりできると定めている。無断で立ち入ると、10万円以下の罰金などが科されることがある。原子力災害対策特別措置法では、原子力災害対策本部長が自治体などに必要な指示を出すことができると明記。今回、本部長の菅直人首相が4月22日、福島第1原発から半径20キロ圏内の9市町村を警戒区域に設定した。

(共同通信配信、2011年5月11日朝刊掲載)

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