×

ニュース

東日本大震災 心身に爪痕深く 中国地方への避難者調査

 中国地方で避難生活を続ける東日本大震災の被災者を対象に中国新聞社が実施したアンケート(23世帯40人が回答)。発生から約2カ月を迎えてもなお、収入を断たれたままで不安定な生活の一端が浮かび上がった。震災のショック、収束の見通しが立たない福島原発事故の影響は根深く、心身の不調を訴える人が多い。

「ショック続く」32%、「求職中」38%

●避難生活の不安

 福島第1原発事故による「放射線の影響」が最多の62.5%で、福島県南相馬市の男性(53)は「戻れるのか戻れないのか常に頭から離れない」と訴える。次に多い「生活費」(60.0%)。「兄弟からの援助を受け何とか生活している」(同県浪江町の52歳女性)と、苦しい胸の内を明かす。夫が現地に残る同県いわき市の女性(38)は「地元の住宅ローン返済に加え、広島での生活で二重に費用がかかり圧迫される」という。生活保護を受ける世帯も複数あった。

 被災地に「残してきた土地・財産」(57.5%)への不安も目立つ。1月に家を買った南相馬市の男性(48)は「補修や管理をどうすればいいのか」。警戒区域内の同県大熊町の男性(33)は「写真アルバムなど、大切な物だけでも早く取りに帰りたい」と記述した。

●精神的ショック

 約3割が震災で受けたショックは「続いている」と答えた。「どちらともいえない」を選んだ人も理由の記述で「頭痛がする」などと心身の変調を記し、影響は全体の過半数でうかがえる。

 2児と同県郡山市から来た女性(31)は「動悸(どうき)が激しくなり、寝込むことがある」、浪江町の女性(61)は「せき込むようになった」と体調の悪化を訴えている。

 「揺れていないのにめまいを感じる」(南相馬市の42歳女性)、「テレビや新聞で被災地の様子をみて泣きそうになる」(同県須賀川市の21歳女性)など不安定な状態が続いている人も多い。

 また、原発周辺からの避難で「嫌な思いをした」と6人が回答。乳児を抱える福島市の30代女性は「母乳は危ないと言われたのはかなりショックだった」と記した。

●生活の状況

 長期化する避難生活について「不安定のまま」という回答が最多で、37.5%に上った。このうち「職がなく金銭的な面が不安」(浪江町の61歳女性)など、仕事が見つかっていない人は約半数に達する。

 避難先で安定した仕事が見つかったケースは「ゼロ」だった。求職中は38.7%に上る。「職に就くつもりはない」を選択した人(32.3%)は、高齢者や子育て中の人が多かった。加えて、いつまで住み続けるか分からない避難先で仕事を探すのをためらう意見も目立った。

 一方、「安定してきた」は20%。南相馬市の男性(48)は「余震や放射線の影響がないのは大きい」とする。

 生活必需品、必要な情報はいずれも「足りている」が「不足」を5~10ポイント上回り、一定の改善はみられた。不足品は、夏場を前に網戸やエアコンが多かった。不足を感じる情報は義援金受給の方法(3人)、原発や放射線の影響(同)など。出身自治体の情報を望む声が強かった。

(2011年5月11日朝刊掲載)

年別アーカイブ