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社説・コラム

社説 政権運営 数の力にのぞくおごり

 統一地方選が迫っている。政府、与党は年度内に2015年度予算案を成立させ、経済の再生に取り組む姿勢をアピールしたかったに違いない。ところが当ては外れる。きのうで衆院通過にこぎ着けたものの、成立は道府県議選の告示の4月3日もまたぐとの見方さえ出てきた。

 「自民党1強」とまでいわれる国会である。政権運営が思惑通りに進まず、もたついているのはなぜか。自らのつまずき以外の何物でもあるまい。

 一つは、何より「政治とカネ」の問題である。

 農相だった西川公也氏、下村博文文部科学相と、閣僚をめぐる政治資金の問題が次々と明るみに出た。予算委員会で連日繰り返されるやりとりに、うんざりした国民も多いことだろう。

 本来は、アベノミクスの影ともいえる格差社会の解消策や「地方創生」の実効性といった、予算案の中身に切り込む議論がなされるべき場である。それ以前のような事柄に審議時間が費やされてしまった点は、遺憾と言わざるを得ない。

 とはいえ、農相にしても文科相にしても「戦後以来の大改革」と政権がうたう重点分野を担う面々である。曇りなき判断が望まれる中、その身ぎれいさをただすのは、やはり当然というべきだろう。

 任命権者である安倍晋三首相の責任は、引き続き問われ続けることになろう。

 いま一つは、異論や批判に向き合おうとしない姿勢である。

 閣議決定で集団的自衛権の行使容認に踏み切った手法に始まり、戦後70年談話の方向付けを有識者懇談会に預けるなど、世論を二分する問題は正面からの議論を避けるきらいがある。

 米軍普天間飛行場の問題では「沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら、辺野古沖への移設を進める」(2月の施政方針演説)と言いながら、沖縄県知事とは面会もしない。有無を言わせず、海底ボーリング調査を再開するやり口はどうだろう。不信の溝をいたずらに深くする気がしてならない。

 首相は予算委で、質問する野党議員にやじを飛ばし、与党の委員長にたしなめられた。そのやじが事実誤認に基づくものだったと後日分かっても、非を認める態度は率直さに欠けた。

 数の力を頼みにした、おごりの現れだとすれば、見過ごすことはできない。

 そんな政権運営に、ほかならぬ自民党の「先輩」から苦言が目立つ。河野洋平元衆院議長は「今は保守政治というより右翼政治のような気がする」とし、小泉純一郎元首相は原発回帰に非を鳴らす。あまりの独善ぶりへの警鐘とも受け取れよう。

 与党を組む公明党は、自ら任じる「ブレーキ役」が限定的にとどまってはいないだろうか。歯止めをかける役目は安全保障の問題に限らないし、その出番は今をおいてあるまい。

 野党も、気概の見せどころである。筆頭の民主党は、たなぼたの「敵失」にとらわれるあまり、肝心の予算案については具体的な対案を示しきれていない。参院予算委こそ、野党連携で対立軸を打ち立ててほしい。

 後半戦国会では、集団的自衛権の行使をめぐる安全保障法制の議論が控える。戦後の岐路に立つ今、このままの政治がまかり通るようでは危うい。

(2015年3月14日朝刊掲載)

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