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被爆70年…響く復興の力 広島出身の糀場富美子「摂氏4000度からの未来」作曲 27日に広島で初演

 広島市南区出身の作曲家糀場(こうじば)富美子(62)が、被爆70年の節目に、広島交響楽団からの委嘱作「摂氏(せっし)4000度からの未来」を完成させた。焦土から復興し、未来に向かう古里を描いた楽曲。糀場は「現在や未来のヒロシマに対するエールや、永遠の平和を祈る気持ちを込めた」と力を込める。広響による初演コンサートが27日にある。(余村泰樹)

 題名は爆心地の地表が3千~4千度になったとされることから付けた。八つの部分からなる20分弱の曲をチューブラーベル(鐘)2台がけん引する。原爆の悲惨さや怒りを表す前半では、終盤に弦楽器や管楽器奏者を含む十数人が風鈴を鳴らす。「清らかで澄んだ音色に、4千度の熱風から抜け出し、新たな未来へ向かう意味を込めた」。躍動する街や平和への祈りを表現する後半につながっていく。

 親類や近所の人に、あの日のことを聞いて育った糀場。被爆者の父は、3人の子どもの結婚まで被爆者健康手帳を申請しなかった。「広島レクイエム」(1979年)「未風化の七つの横顔」(2005年)に続き、ヒロシマをテーマにした曲は3作品目。「ヒロシマの曲を書くことには、ほかにない重さがある」と打ち明ける。

 原爆の悲惨さや祈りを描いた前2作品とは異なり、前向きなメッセージも盛り込んだ今作。「未来をどう描くべきか苦労した」。昨年初めから構想を練り、ことし2月に完成した。

 初演は、中区のアステールプラザである広島交響楽団の「秋山和慶のディスカバリー・シリーズ~音楽の街を訪ねて」。音楽監督・常任指揮者の秋山の指揮で約70人が奏でる。市の被爆70年記念事業の一環で演奏を録音し、CD8千枚を製作。8月6日の平和記念式典に参列した各国の代表らに配る。「未来に向けて前進する姿を発信することで、焦土から復興を遂げ、素晴らしい街になったヒロシマに思いをはせてもらえれば」と期待する。

 コンサートは午後6時45分開演。糀場のトークの後、新作とベートーベンの交響曲第5番「運命」を演奏する。5200~3200円。学生千円。中国新聞社と広島交響楽協会、市の主催。広響事務局Tel082(532)3080。

(2015年3月14日朝刊掲載)

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