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兄のかばん 反核への願い 慶徳さんが原爆資料館に寄贈 新着展 75点を公開

 原爆の爆心地そばの学徒動員先で被爆し、2日後に亡くなった旧制広島二中(現観音高)1年慶徳(けいとく)清さん=当時(13)=のかばんと小袋が18日、広島市中区の原爆資料館東館で始まった新着資料展で公開された。あの日以来、思い出と悲しみが詰まった形見として遺族が大切に守ってきた。被爆70年を前に寄贈を決めた弟の進さん(79)=広島県府中町=は「原爆の悲惨さをいつまでも伝えてほしい」と願う。(田中美千子)

 布製の肩掛けかばんで、校章があしらってある。腰に付けていたとみられる小袋は名前や校名が手書きしてある。この日、展示ケースに並んだ遺品と対面した進さんは、熱心に見入る来場者たちの様子に「思い切って寄贈してよかった」とつぶやいた。

 8月6日の朝、兄は家屋を壊して防火帯を設ける建物疎開作業のため、中島新町(現中区)へ向かい被爆した。爆心地から約600メートル。7日夕に府中町の自宅へ連れ帰られた時は大やけどを負っており、うわごとを繰り返したという。進さんは「一緒に将棋する夢を見たんだろう。私の名前を呼び『王手!』と言った」と記憶する。翌朝、息を引き取った。

 遺品のかばんは母サダメさん(1996年、88歳で死去)がたんすに保管し、思い出しては取り出し、なでていた。「母の悲しみは癒えることがなかった。勉強も運動もでき、優しかった兄の命を突然に奪った原爆の悲惨さを知ってほしい」

 新着資料展は、昨年3月末までの1年間に寄せられた約千点のうち75点を紹介している。無料。12月2日まで。

(2015年3月19日朝刊掲載)

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