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「廃絶が世界の流れ」 「核標的」発言 広島の被爆者 不安や怒り

 デンマークが、北大西洋条約機構(NATO)のミサイル防衛(MD)計画に参加するなら、「デンマーク艦船はロシアの核ミサイルの標的になる」と駐デンマークのロシア大使が発言したと報じられたのを受け22日、広島市の被爆者たちに不安や怒りが渦巻いた。プーチン大統領がウクライナ政変での核兵器使用準備を指示する発言が明らかになったばかり。「核兵器が脅しとなる以上、平和は訪れない」とあらためて廃絶を訴えた。

 「けしからん」。広島県被団協の大越和郎理事長代行(74)は切り捨てた。「核兵器による威嚇は、抑止力として『核の傘』が広がる悪循環を生む。大本を断ち切らねばならない」。昨年12月に国連総会本会議で採択された核兵器廃絶決議案の共同提案国は過去最多。「廃絶が世界の流れだ」と主張を強めていく考えだ。

 「ロシアはますます国際社会での信用を失う」と糾弾するのは、広島市立大広島平和研究所(安佐南区)の水本和実副所長。昨年2月のウクライナ政変を発端とした欧州での孤立が背景にあるとみる。「欧州諸国はロシアを追い込まないよう慎重に行動すべきだ」とも指摘した。

 来月27日には核拡散防止条約(NPT)再検討会議が始まる。「水を差す発言だ」。もう一つの県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(73)は憤る。プーチン大統領が使用準備を指示した発言も踏まえ、「会議の見通しは一層暗くなった。被爆70年の節目に、被爆者が落胆する結果になってはいけない」と語気を強めた。(堀晋也、根石大輔)

(2015年3月23日朝刊掲載)

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