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証言テープ 161本現存 爆心地の暮らし 60~70年代聞き取り

■記者 金崎由美

 社会学者で、広島大教授を務めた故湯崎稔さんが1960~70年代に爆心地から500メートル以内の被爆者や元住民の暮らしぶりなどを聞き取ったテープ161本が、広島市内に保管されていた。貴重な「証言」は、被爆前の街並みと暮らしをコンピューターグラフィックス(CG)で復元する事業に生かされる。

 テープは、湯崎さんが原爆被害の全体像を浮かび上がらせることや、爆心地の暮らしぶりを掘り起こすため、100人以上から聞き取った。

 湯崎さんは1984年、脳出血で53歳の若さで亡くなり、遺族から相談を受けた同大原爆放射能医学研究所(現・原爆放射線医科学研究所、原医研)で共同研究者だった鎌田七男元所長(74)が、爆心地付近を再現した手描きの地図20枚とともに預かったという。

 テープの一部は原医研の被爆者健康調査で使われたが、大半は未公開のまま眠っていた。その存在を、爆心地から半径1キロをCGで復元しようと取り組む映像制作会社社長田辺雅章さん(73)=西区=が知り、鎌田さんに貸し出しを頼んだ。

 1年かけてテープ起こしをし、証言者の被爆場所の特定や当時の状況などを分析。存命の被爆者から聞き取りをするという。田辺さんは「被爆後20~30年の肉声がこれだけまとまって残るテープは第一級資料。湯崎さんの遺志を継ぎ、映像でよみがえらせたい」と話している。原医研の神谷研二所長も「資料収集などでプロジェクトに協力したい」としている。

 湯崎さんの次男で、広島県の湯崎英彦知事は「父はいつも小型のテープレコーダーを持ち歩いていた。志半ばで亡くなった父の資料が日の目を見るのはありがたく、さらに生かしてほしい」と話している。

(2011年5月25日朝刊掲載)

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