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社説・コラム

『記者縦横』 廃炉 安全かつ速やかに

■経済部・山瀬隆弘

 中国電力が先週、島根原発1号機(松江市鹿島町)の廃炉を決めた。1974年3月に運転を始めた1号機は今月29日、41歳の誕生日を迎えるところだった。「更地にするまで30~40年かかる」との苅田知英社長の言葉に従えば、その「終活」の時間は運転期間と同等。廃炉作業の膨大さを痛感する。

 廃炉が決まった日。地元自治体の首長は早速、放射性廃棄物や使用済み核燃料の処理の仕方に触れた。松江市の松浦正敬市長は「市民の安心、安全を第一に考えて」と苅田社長に迫った。島根県の溝口善兵衛知事も「周辺地域の安全に万全を期すように」とくぎを刺した。2人の言葉からは、未知の事業に対する率直な不安が伝わってきた。

 国も廃炉への対応を急いでいる。経済産業省は昨年夏、今後の技術開発や人材育成の工程表をまとめる審議会の作業部会を設けた。5月までに一定の取りまとめをする方針である。

 一方、中電の廃炉に向けた具体的な計画作りは白紙の状態だ。人材育成もこれから。廃炉の進め方について「いろんな知見を参考に」「技術的に勉強しながら」と説明するが、今後の歩みの遅さも予感させる。

 安全を最優先に廃炉作業を進めるのは当然である。だが、地元の懸念を考えれば、いくらでも時間をかけてよいことにはなるまい。安全かつ、できる限り速やかな作業が求められる。そうでなければ、働いた期間を「終活」の時間が超えることにもなりかねない。

(2015年3月27日朝刊掲載)

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