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『フクシマとヒロシマ』 全県民202万人 問診へ

■記者 下久保聖司、河野揚

 福島第1原発事故を受け、福島県は27日、約202万人の全県民を対象に、被曝(ひばく)線量を推定するため、3月11日の事故以降の行動を問診することを決めた。広島、長崎の被爆者健康調査で構築された手法で、健康管理や補償の根拠として役立てる。6月末、大気中の放射線量が高い地域から始める。

 広島大や長崎大、放射線影響研究所(広島市南区)などでつくる福島県民健康管理調査検討委員会が、福島市内で初会合を開き、決めた。県立医科大を中心に、被爆者医療や研究で蓄積のある広島、長崎の各機関や放射線医学総合研究所(千葉市)、福島県医師会などがサポートする。

 問診は任意で、放射線量が高い屋外での行動時間や何を食べたかなどを尋ねる。大気中の放射線量データなどと組み合わせ、個人の被曝線量を推定する。保健師を中心とする調査員が担当。6月末からは当面、線量が高い地域で対象人数を絞って調査する。

 将来的な健康影響が懸念される結果が出た場合は、詳細に検査。採血や採尿をしたり、ホールボディーカウンター(全身測定装置)を使ったりして、体内の被曝状況も調べる。調査結果は各個人に伝え、全体統計も公表するという。

 広島大原爆放射線医科学研究所の神谷研二所長(放射線障害医学)は会合後「福島県民の健康を守るために、広島の蓄積を生かしたい」と話した。

 200万人を超す県民から問診の同意をいかに取り付け、調査に必要な人員をどのように確保するかなどが今後の課題となる。検討委座長に選ばれた長崎大の山下俊一教授(被曝医療学)は会見で「あくまで県民個々人のための調査。個人情報を保護するため、倫理委員会を設置するなどの配慮も必要となる」と強調した。

(2011年5月28日朝刊掲載)

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