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通信「ヒロシマ・ナガサキを考える」 発行29年間 100号で幕

■記者 岡田浩平

 原爆や戦争の記憶を伝えようと、東京都葛飾区の詩人、石川逸子さん(78)が1982年から29年間発行してきた通信「ヒロシマ・ナガサキを考える」が今月の100号で終刊した。石川さんは、読者たちが伝える側となり、体験が語り継がれるよう願っている。

 最終号はB5判で50ページ。広島で被爆した女性が弟の壮絶な死にざまを克明に描いた手記や、石川さんによる証言の聞き書きを掲載。在韓被爆者の渡日医療を支援する牧師の講演、在日朝鮮人の詩など原爆や戦争について多角的に考える材料も提供している。  別冊(26ページ)も急きょ作成。東日本大震災と福島第1原発事故をテーマした詩や寄稿の特集を組んだ。

 石川さんは中学教員だった75年ごろ、修学旅行の引率で訪れた広島で初めて被爆証言を聞き、衝撃を受けた。創刊号には「ヒロシマ・ナガサキでなにが起こり、なにが続いているか、知り、考えることから始めたい」とつづっている。

 首都圏や広島の被爆者を訪ねての体験の聞き書きのほか、手記や講演での証言なども掲載。戦争の加害責任もテーマに取り上げた。発行部数は当初100部ほどだったが最終号は500部余り。一部200円で発送まで1人でこなしてきたが「元気なうちに」と閉じる決心をした。

 「戦争や原爆の体験は一人一人違うからリアリティーを持って心に響いた」と振り返る石川さん。「証言を読んだ人、聞いた人が考え、まただれかに伝えてほしい」

(2011年5月28日朝刊掲載)

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