×

ニュース

鋼材補強で最終調整 原爆ドーム耐震化 免震工法見送り

 完成から100年を迎える世界遺産・原爆ドーム(広島市中区)の初の耐震工事について、市が内側から鋼材で補強する工法で最終調整していることが29日、分かった。南海トラフ巨大地震で想定される震度6弱でも耐えられるよう検討してきた。免震工法は地面を掘る必要があり「尊厳性が損なわれる」として見送る方向。新年度に決定し、被爆70年となる8月6日以降に着工する構えだ。

 梁(はり)の支えがない壁など5カ所のうち、数カ所をドーム内側から鋼材を当てて崩れないようにする。残りの箇所はエポキシ樹脂を注入する方向で検討しているとみられる。

 原爆ドームはれんが造り3階建て。1915年に広島県物産陳列館として完成した。市が2013年6月、壁から試料をくりぬいて耐震性を調べた結果、一部で破損する恐れがあることが判明。14年1月、市は「文化財を損なわない可逆的な手法で対策をする」と初の耐震工事をする方針を表明していた。

 しかし有識者たちでつくる原爆ドーム保存技術指導委員会と進めてきた協議は難航。免震や、壁などに炭素繊維を巻いて補強する工法も候補に挙がったが「外観を損なう」などの観点から除外した。5月以降に同委員会で工法を決め、文化庁と協議をする。

 市はこれまで1967年度、89年度、02年度の3回、鉄骨の補強やコンクリートの劣化補修などをした。(川手寿志)

(2015年3月30日朝刊掲載)

年別アーカイブ