×

社説・コラム

『この人』 広島大の第12代学長に就任した 越智光夫さん 

国際化の必要性 今こそ

 命を脅かす感染症や災害、紛争、テロなど「解のない困難に直面している」と今の世界を捉え、「国際レベルの教養人を輩出するのが夢」と語る。外国語を操り、世界の人々の民族性や宗教観を理解し、共感できる人材の育成を目指す。そして「世界最初の被爆地の大学の学生には、いつも平和について考える人になってほしい」と求める。

 整形外科医で、膝軟骨のスペシャリスト。学長就任直前の3月にも3例の手術を担当した。広島東洋カープなどスポーツ選手からも頼られる存在だ。再生医療の分野では、膝軟骨が欠けた患者の細胞を培養、患部に移植する技術を考案した。2月には移植する細胞に鉄粉を混ぜ、メスを使わず磁石を使って患部に定着させる新しい方法で手術をした。

 先進的な研究に取り組んできた実績から、約20年間に100回以上、海外に招かれ講演をしてきた。ネットワークを広げ、国際学会にも参加する中、大学の国際化の必要性を実感。「世界に広島大を発信しないと、忘れ去られていく」と危ぶむ。同大の経営協議会の学外委員にも8年ぶりに外国人委員を起用した。

 学長就任が決まってから、学内のさまざまな領域の研究力の高さを再認識、驚いたという。「全学的な研究力を高めるためにまず学内で横の連携を進め、情報を共有する必要がある」と考えている。

 愛媛県今治市出身。趣味は読書と絵の鑑賞。海外出張では時間を見つけ、現地の美術館を訪ねる。今後、手術の執刀は難しいが、外来診療はしばらく続けるという。(新本恭子)

(2015年4月3日朝刊掲載)

年別アーカイブ