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社説・コラム

『書評』 郷土の本 短編集「ジ エンド オブ ザ ワールド」 戦争やいじめ どう向き合う

 「ズッコケ三人組」シリーズで知られる、広島市西区出身の作家那須正幹さん(72)=防府市。心躍る人気の冒険譚とは趣の異なる短編集「ジ エンド オブ ザ ワールド」=写真=が、約30年ぶりに文庫で復刊した。終末核戦争やいじめなどを題材に全10編。「今の子どもたちがどう読むか」。那須さんは、投げ掛ける。

 冒頭の表題作は、衝撃的だ。中東で起きた戦争をきっかけに、戦火が世界各地に広がる。そして、日本も核攻撃を受ける。地下シェルターに1人取り残された少年が、絶望の中でわずかな希望を見いだす。

 「あの頃は、悪い夢みたいだった。こう世の中がおかしくなっていると、絶対起こらないとはいえなくなった」と那須さん。

 「約束」は、幼稚園の卒園から6年後のクラス会が舞台。子どもたちの持つ悪意をあぶり出す。近年のいじめにも通じる構造だ。ほかにも、那須さんの子ども時代の思い出を基にした「ガラスのライオン」は、故郷の己斐の街のたたずまいが浮かんでくる。

 表紙カバーの装画は、西区の漫画家西島大介さん(40)が手掛けた。271ページ、670円。ポプラ社。(石井雄一)

(2015年4月5日朝刊掲載)

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