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縮景園(広島市中区)の被爆イチョウ あの日語る 筑波大教授が手作り紙芝居

 原爆に耐えて生きる被爆樹木に関心を持ってもらおうと、筑波大の鈴木雅和教授(63)=環境デザイン=が縮景園(広島市中区)の被爆イチョウを主人公にした紙芝居を手作りした。古木があの日を振り返り、自らに刻まれた被爆の痕跡を伝える内容。中区のNPO法人ANT―Hiroshimaに贈り、平和教育に役立ててもらう。

 タイトルは「もう一つの太陽」。樹齢200年を超すイチョウが、戦前の平和な暮らしやあの日の空に現れた「二つ目の太陽」の恐ろしさ、焼け残った寂しさを語る。爆心地側の根が育ちにくいなどの特徴も紹介。「わしらの声を聞いておくれ」と訴える。日本語版と英語版があり各11ページ。教え子の協力で柔らかい作風の絵をあしらった。

 先月23日、広島市へ被爆樹木の見学に訪れたノルウェーの環境デザインの専門家たちを前に、ANTの事務所で鈴木さん自ら紙芝居を初めて披露した。参加したアン=ヒャシュティ・ヨンセンさん(51)は「樹木の特徴が感動的な手法で説明してある。いかに貴重か伝わった」とたたえていた。

 鈴木教授は数年前から、広島の樹木医たちと被爆樹木の傾きや内部の状態などを調べてきた。「他の戦争遺産と違い、今なお生き抜き、無言の訴えを続けている。被爆樹木の保全や平和を願う思いが広がれば」と期待している。(田中美千子)

被爆樹木
 広島市が1996年度から登録を始めた。45年8月6日の原爆投下の前からあり、爆心地から約2キロ以内で被爆した樹木が対象。市民が立ち入りできない個人宅を除く。現在は公園や寺など56カ所にイチョウ、エノキなど約30種類約170本ある。市は、被爆時の状況などを記した説明板を取り付け、根腐れ防止や害虫駆除などの「治療」もしている。

(2015年4月6日朝刊掲載)

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