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地方の針路’15統一選 訓練乏しく避難不安 島根原発30キロ圏 出雲・雲南・安来市民

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の30キロ圏にある出雲市などの住民から、原発事故を想定した防災訓練の在り方に不安の声が上がっている。30キロ圏にある出雲、雲南、安来の3市の避難対象者は計約19万人と多くエリアも広いため、6年に1回しか訓練できない地区もある。「少ない訓練経験で事故時に逃げられるのか」と不安視し、独自に訓練をする住民もいる。(秋吉正哉)

 島根原発から南西約10キロにある出雲市北東部の旧平田市の伊野地区。地区住民約1400人をまとめる平田地域自治協会連合会の多久和祥司会長(63)は「原子力防災訓練は6年に1度しか担当地区にならない。昨年は参加できなかった」とため息をつく。

 伊野地区を含む原発10キロ圏地域は、もともと国が「原子力災害対策重点区域」に指定し、原発事故に備えた同訓練を島根県が実施していた。福島第1原発事故後の2012年10月、国は「原子力災害対策重点区域」を30キロ圏に拡大。対象自治体は松江、出雲の2市から、鳥取県側の米子、境港両市を含む両県の計6市に広がった。このため、訓練も12年度から両県と6市による合同となった。

 出雲市では市全域(43地区)の約7割に当たる31地区が同区域となり、対象の市民も約1400人から約12万人に急増。市防災安全課は「偏りなく参加してもらう」として、市内を6エリアに分けて訓練に順番に参加させている。だが、多久和会長は「普段から経験していないと心配だ」と感じ、地区独自の小規模な訓練を毎年実施している。

 訓練機会が少ないと嘆くのは、30キロ圏内に住む約3万3千人の雲南市民も同じだ。原発20キロ圏の同市大東町の海潮地区(約1800人)は12年度の訓練に50人が参加。30キロ圏外への避難を想定し、バスに乗り込んだ。しかし、次の訓練への参加のめどは立っていない。同地区振興会の加本恂二(しんじ)会長(70)は「住民の不安解消のため、もっと訓練の機会を増やしてほしい」と語る。

 原発が立地し、旧鹿島町時代を含め1982年から住民が訓練に参加してきた松江市と違い、周辺の出雲、雲南、安来の3市が原発と本格的に関わり始めたのは12年度から。出雲市の伊野コミュニティセンターの松本剛美(まさみ)センター長(67)は「長年、国や県の支援を受けてきた立地自治体と違い、周辺市の取り組みや意識は遅れている。国や県はもっと支援するべきだ」と訴える。

 島根県原子力安全対策課は「対象自治体が急に増え、訓練体制を含め課題が多いのは確か」と認める。改善していく方針だが、「予算や人手の問題もあり時間はかかる」という。  一方、島根原発2号機では、再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査が進む。立地自治体の県と松江市が稼働の是非を判断する時期は近づく。加本会長は「県は稼働の是非を判断する前に、県民の不安を解消すべきだ」と注文する。

(2015年4月8日朝刊掲載)

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