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ルポ注目区 <上> 艦載機移転 訴え多様 「新交付金」の使い道言及も 岩国市・和木町選挙区(定数5―候補者数7)

 県議選は12日の投開票に向け、中盤戦に入った。候補者は67人と過去最少の一方で、2007年以来8年ぶりに全15選挙区で選挙戦となり、各地で少数激戦を繰り広げている。「県政与党」を自任する自民党が強さを発揮するのか、非自民党の候補者が壁を突き崩すのか。県内の注目区の情勢を探った。

艦載機移転 訴え多様

「新交付金」の使い道言及も

岩国市・和木町選挙区(定数5―候補者数7)
松田一志  57 共新
槙本利光  69 自現
山手康弘  37 自新
井原寿加子 59 諸現
渡辺靖志  56 無新
橋本尚理  58 自現
畑原基成  60 自現

(届け出順、敬称略)

 「これで終わると思わない方がいい。国は交付金というアメをちらつかせ、新たな負担を要求してくる」。5日、民主党の推薦を受ける無所属新人の渡辺靖志(56)は、岩国市の商業施設前で訴えた。

 「これ」は、17年ごろまでに予定される米海軍厚木基地(神奈川県)から米海兵隊岩国基地への空母艦載機部隊59機の移転を指す。県と市は移転容認を明言していない。だが、国は昨年5月に愛宕山地域開発事業跡地で米軍施設整備を始めるなど、移転に向けた準備が目に見えて進む。

 政府は本年度、在日米軍再編で基地負担が増える都道府県を対象にした新たな交付金を創設する。受け取るのは山口だけという特殊な金だ。県は19年度までの5年間で100億円の配分を想定し、道路や河川の改修などを予定する。

 渡辺の直前、自民党現職の畑原基成(60)も同じ場所で演説した。「争点ではない」と艦載機移転には触れなかったが、市議会議長は「(畑原が)官房長官と直談判して金がついた」とアピールした。

 改選前の5議席のうち、4議席を握る自民党。今回は現職3人、新人1人を公認した。いずれも、訴えに基地の存在を前向きに捉えた言葉を織り交ぜる。

 現職の橋本尚理(58)は3日の出陣式で「もっと基地周辺住民の安心安全対策が実施されるなら、移転を容認する」と明言。100人単位の雇用が生まれ、基地関連企業も誘致できると唱えた。

 現職の槙本利光(69)は、5日夜の演説会で「基地とは共存共栄」と語った。ハード事業に使い道が限られている新交付金も、「ある程度自由に使えるよう国に求めたい」との考えを示した。

 引退する現職の父の地盤を受け継ぐ新人の山手康弘(37)は3日の出陣式で基地問題に言及。「岩国は日本の平和と安全に多大な貢献をしている。見合う支援を国に継続して訴えなければ」と説いた。

 非自民党の候補者は、自民党の議席の一角を崩そうと懸命だ。「国政と同様に1強多弱」(民主党県連幹部)の県議会に変化をもたらすには格好の選挙区だ。さらに次の任期中に艦載機移転が予定される中、その是非を判断する重要な役割を担う議席となる。

 諸派で市民政党「草の根」現職の井原寿加子(59)は5日の演説会で、「県や市町は国の言いなり。市民の安心安全は、わずかな交付金では守れない」と力説した。移転反対の立場を取る。

 共産党新人の松田一志(57)は、移転反対を前面に掲げる。3日の街頭演説では、「爆音が響き、犯罪や事故の危険性も高まる。移転反対の願いを届ける議席が必要」と支持を求めた。=敬称略(野田華奈子)

(2015年4月8日朝刊掲載)

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