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「軍備強化を危惧」露の動向念頭 ひろしまレポート

 「世界の流れは軍縮より軍備強化の方向に動いている」―。8日、「ひろしまレポート」を発表した記者会見。広島県の「国際平和拠点ひろしま構想」の推進委員会副座長で、日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター前所長の阿部信泰氏はそう危惧した。

 阿部氏の念頭にあるのは核兵器を保有する5大国の一つ、ロシアの動向だ。昨年のウクライナ情勢をめぐり、米ロ関係は悪化。プーチン大統領は核使用準備を指示したと3月中旬に明かした。同時期にロシアは大規模演習で、核兵器の限定的先制使用を想定していたことも判明している。

 センターの戸崎洋史主任研究員は「保有国の核戦力の近代化、増強の動きが続いている」とも指摘。米ニューヨークで27日始まる核拡散防止条約(NPT)再検討会議について、阿部氏は国際情勢を踏まえ「厳しいものになる」との認識を示した。

 ひろしまレポートは、核軍縮や不拡散の各国の取り組み状況や問題点を調査・分析することで、核兵器の廃絶を後押しする狙いがある。被爆70年のことし、5年に1度の再検討会議の開催年にできたレポートの果たす役割は大きい。

 県は再検討会議に合わせ、ひろしまレポートを紹介するパネルを27日から5月1日まで国連本部で展示する。各国の評点率を示したグラフと英語の解説文を用意。ヒロシマからの発信の一つとする考えだ。湯崎英彦知事は「核兵器をめぐる状況が厳しい今こそ、広島から声を上げ、核兵器廃絶の機運を醸成する必要がある」としている。(松本恭治)

(2015年4月9日朝刊掲載)

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