×

社説・コラム

社説 電源構成比率 再生エネに本気見えぬ

 電力需要をどのように賄うのか。2030年の電源構成をめぐる議論が加速し始めた。福島第1原発事故から4年、その比率が注目される。

 経済産業省はある程度、腹を固めたと伝えられる。原発、石炭火力、地熱などの「ベースロード電源」が全体に占める割合を、現在の4割から6割にまで引き上げる構えのようだ。  とはいえ実現には、その中で原発に比重を置きたいというのが本音であろう。このままなら「原発回帰」がより鮮明になっていくのではないか。

 この流れを裏付けるかのように自民党もおとといベースロード電源比で6割を求める提言を安倍晋三首相に提出した。首相も「安定供給の確保が大切だ」と述べて受け取った。あうんの呼吸のように思える。

 それでは再生可能エネルギーはどんな扱いとなるのか。経産省は20%台半ばとし、辛うじて原発を上回る比率にする意向とされる。それにしても脱原発志向の強い世論に沿ったものだとはいえまい。国として積極的に推進する姿勢がうかがえないのは、やはり疑問だ。

 そもそもベースロード電源という論点で考えること自体に、危うさはないか。石炭火力は温室効果ガスの排出などのネックがあって伸ばしにくく、水力や地熱は増設が容易でない。つまり6割に増やすことイコール原発依存にほかなるまい。あえて大くくりにして批判を避ける狙いとも思えてくる。

 ただ最大の焦点となる原発比率については、確たるものはまだないようだ。仮に20%台前半に落ち着くとすれば、既存の原発を再稼働するだけでは足りないはずである。運転40年を超えた老朽原発の運転延長のほか、建て替えや新増設までも前提とするのだろうか。「原発依存を可能な限り低減させる」という安倍政権の基本方針の矛盾が当然、問われてこよう。

 まさしく議論は生煮えのままと言わざるを得ない。現に政府内でも意見が統一されているようには思えない。

 環境省は再生エネルギーの比率について、最大35%にまで引き上げられるとの試算を先週、公表したばかりである。

 ところが宮沢洋一経済産業相はおととい、この試算について実現可能性を十分に考慮していないと言い切り、「電源構成比率の基礎には用いられない」と切って捨てた。これでは閣内不一致に等しかろう。

 曲がりなりにも省庁が税金を使って打ち出した数字を簡単に無視するような姿勢は理解に苦しむ。送電網などの整備負担が重いとするが、どこまで中身を精査した上での発言なのだろう。いかに経産省が「結論ありき」で動いているかを露呈したとはいえまいか。

 経団連も再生エネルギーは15%にとどめ、原発を25%以上にするよう意見をまとめた。与党と経済界が軌を一にして、原発回帰への外堀を埋めようとしているようにも見える。

 政府は早ければ今月中にも、電源構成比率を取りまとめたいようだ。エネルギー政策とリンクする温室効果ガスの削減目標を国際社会に早急に示さなければならない事情はあるにせよ、拙速な進め方は将来に禍根を残す。もっと国民に分かりやすい議論を求めたい。

(2015年4月9日朝刊掲載)

年別アーカイブ