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『フクシマとヒロシマ』 土壌の線量 数十年追跡 研究者 継続調査を提言

■記者 下久保聖司

 福島第1原発事故による放射性物質の土壌汚染について、大学などの研究者たちが数十年間の継続調査の必要性を訴えている。放射線量が減るには長期間かかるためだ。文部科学省は6日、土壌調査を開始。研究者はこの調査結果をベースとして今後、雨などによって放射性物質がどのように地中に浸透するかなどを追跡する必要を説く。

 提言しているのは、原子核物理学や放射線生物学などが専門の大学教員たち。事故で放出されたセシウム137の物理的半減期(元の物質の半分が放射能を失うまでの時間)は約30年間のため、人体や農作物に影響がない程度まで放射線量が減るのを確認しなければならないと強調する。

 今年で事故後25年がたったチェルノブイリ原発事故周辺でも調査は継続中。研究者の一人は「少なくとも人間の一世代に当たる20~30年間は調査が必要だと国に説明している」という。

 文部科学省は中国新聞の取材に対し「(長期調査の)必要性は認識している。ただ予算が通ることが大前提」と回答。6日始まった土壌調査では、地表5センチの土壌に含まれる放射性物質の種類や量のほか、放射性物質が長時間かけて地中に浸透することを想定して30センチまでの地層を採取しているという。

 今回の土壌調査は、福島県全域と隣県の宮城、茨城、山形の一部が対象。10日間かけて約1万点の土壌をサンプル採取する。調査に協力する35の大学・機関のうち広島大は原爆投下後の「黒い雨」の調査研究の実績を生かす。

(2011年6月7日朝刊掲載)

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