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社説・コラム

Let’s広響 秋山指揮 平和の音色 被爆70年 本年度定演17日スタート

 被爆70年の本年度、広島交響楽団は、不屈の作曲家ベートーベンの音楽を中心に定期演奏会を届ける。その初回を飾る第348回定演(17日)のプログラムは、ロシアのプロコフィエフとの組み合わせ。音楽監督・常任指揮者の秋山和慶のタクトで、平和の音色を響かせる。

 「平和と希望への祈り」をテーマに、本年度のほぼ全ての定演にベートーベンの交響曲や協奏曲を組み込む。今回は交響曲第4番。「2人の北欧神話の巨人(交響曲第3番『英雄』と第5番『運命』)に挟まれたギリシャの乙女」とのシューマンの評が示すように、明るさや優しさをたたえる。難聴に苦悩し、遺書もしたためたベートーベン。その逆境を乗り越えた後に創作しただけに力強い生命力に満ちる。

 冒頭の序曲「レオノーレ」第3番も、同時期の作品。印象的なトランペットのファンファーレとともに、新シーズンの始まりを高らかに告げる。

 締めくくりはプロコフィエフの歌劇「戦争と平和」からの交響組曲(クリストファー・パーマー編曲)。19世紀のロシアを代表する文豪トルストイの同名小説を基に、プロコフィエフが創作した晩年の大作。全曲演奏すると、約4時間に及ぶ長大な歌劇だ。

 広響にとっても、50年を超えるキャリアを持つ秋山にとっても初演。映画音楽の編曲者として活躍したパーマーが、戦闘の場面や民衆が平和の訪れを喜ぶ一幕を盛り込みながら、30分強に凝縮した。美しいメロディーがちりばめられ、親しみやすい仕上がりとなっている。難解なイメージがあるプロコフィエフだが、構えず魅力に浸りたい。(余村泰樹)

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 開演は午後6時45分、広島市中区の広島文化学園HBGホール。5200~4200円(学生1500円)。広島交響楽協会と中国新聞社の主催。広響事務局Tel082(532)3080。

(2015年4月9日朝刊掲載)

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