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社説・コラム

『記者縦横』 世界を体験 10代に期待

■ヒロシマ平和メディアセンター・二井理江

 「戦争を知らない子供たち」ならぬ「平和を知らない子どもたち」である。発案者は中国新聞ジュニアライター。第2、4木曜に連載中の「ピース・シーズ」のテーマ案だ。紛争で犠牲を強いられている子どもをリポートしようとなった。

 NPO法人の協力を得てインターネットのテレビ電話でパレスチナの子どもに取材した。「子どもでも逮捕される」「催涙ガスが使われる」と生々しい。一方で「サッカーが好き」「俳優になりたい」とも聞き、和やかな雰囲気だった。

 しかし終盤で「事件」が起こった。パレスチナの子どもから出た「悩みはありますか」との質問に対し、ジュニアライターが冗談交じりに「彼女ができない」と答えた瞬間だった。画面向こうの少女たちが戸惑った表情を見せたのだ。

 後日、現地の日本人代表から届いたメールによると、イスラム教では婚前の男女関係は許されておらず、現地では若い男女が公然と街でデートするのも難しいらしい。現場では「あらやだ、そんなことばかり考えているの」とつぶやいた女の子もいたそうだ。

 「ああ、なるほど」とジュニアライター。こうやって文化や考えの違いを理解し合うことが「平和」を広げる一助になる。27日に国連本部で始まる核拡散防止条約(NPT)再検討会議に2人のジュニアライターが派遣される。10代の目線で、世界各国から集う人の考えの差異をいかに理解し核廃絶への道筋を取材、表現するか。楽しみだ。

(2015年4月10日朝刊掲載)

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